犯人探し
城の門から続く大通りは繁華街になっていて
そこから細い道に入っていくと小さなお店が一つあります
「えーと、ここ……なのか……?」
食事処でした
「魔術師の家が……定食屋……?」
玄関前の鈴がちりんちりんと鳴りドアが開きます
「いらっしゃいませー、開いてる席にどうぞー」
小柄な少年が奥から出てきました
「ソロー……さん? 国王の使いの者です!」
「いえ、僕はバイトですソローさんなら買い物行きました。そろそろ帰ってくるころだけど……なんか食べませんか?」
「えぇ、それならお茶だけもらえますか」
店内は落ち着いた雰囲気で、南国から北国まで色々な種類の観葉植物が揃えられていました
(学校を辞めた後は魔術を活かした料理を振る舞って暮らしていたのか……しかしなんでまた……)
「どうぞ」
「あ……いい香り……」
「特別な葉っぱ使ってるんですよ。ウチホント素材だけはいいんで」
「素材だけは余計だぞ」
「ソローさん」
いつの間にか腕いっぱいの荷物を抱えた男性が側に立っていました
「貴方がソローさんですか、私は国王の使いでやってきました」
「え……俺なんか悪いことしましたっけ……」
「いえ……そういうことではないです。ご相談があって伺いました。」
「へぇ珍しい……相談ね……パーティで使う果物でもさがしてるんです?」
「実は王妃様のことで……」
………
「……なに!?後少しの命……!?新聞では徐々に回復していってると書いていたぞ!?」
「皆様を心配させないよう……そう言ってますね……はい……」
「実際は違うと……」
「はい……」
「……一度王妃の様子を見せて頂きたい……」
「馬車を用意してます。どうぞこちらへ……」
「バイトくん、店番を頼むよ」
ガタガタ……
石畳の道を馬車が少し急いで走ります
「ジャケットを着るなんて久しぶりだ……。今回私を呼んだのは王妃様ですか?」
「いいえ、王妃様は少し話すのにも苦労してます。医者でも治すのが難しいので魔術師の力を借りることにして……
その中でもソローさんは生き物の魔術に秀でているということで、何か手がかりが掴めるかと……」
「……私が呼ばれたのはどうやら最後みたいだな……」
「……」
ソローは寝室へと向かいました
「はじめまして、ソローと申します」
「よくぞおいでくださった……私の妻をどうか救ってやってください……!」
「どれ……―っ!」
王妃の顔を覗き込むと思わず苦い顔をしてしまいました
その変わりよう、肌は薄暗い色になって痩せこけてしまっていて
「気合で生きてる感じだな……」
「王妃さま……僕の方を向いてもらえますか?」
ソローは王妃の頬に手を添えて呼びかけました
「……えぇ」
「診断書がいっぱいあるけど一応検査したい、口を開けて……」
……
「どうなんですか……魔術師様……」
「私は"魔術師様"ではありませんよ……他の皆さんは一度集めてもらっていいですか?」
ダイジョウブナンダロウナ……シンパイダ……
ガヤガヤ……
「さて……確かにこれは難しい……
これは病でも魔術の類でも無いですね……そりゃわかりませんよ……」
「……! 原因がわかったのですか!?」
ソローは花瓶の花を手に取り言いました
「これ頂いてていいですか?」
「あ、ああ……」
「王妃の体を蝕んでいるのは異国の地の毒ですね、私は一度見た植物なら生やせますので……これです」
ソローが花を持つと見る見るうちに毒々しいほどに赤い花にその姿を変えました
「見たことないとわからないでしょうな」
「毒だと……それじゃ誰かが王妃に毒を……」
「肌で触れたりしても一部かぶれるだけですが、飲むと危険です。誰かが食事に混ぜたんでしょうね」
「くそ…!今すぐ厨房に出入りいた者を全員連れてこい!」
………
こうして料理に関わったと思われる者達が一箇所に集められました
「この中に裏切り者が居るのかどうかはわからない、疑って悪いが今後の関係のためにもはっきりさせておきたいんだ。許してくれ」
マァ……オレハヤッテナイシ……カマワナイケド……
(……大丈夫……薬品は処分したんだ……オレにはたどり着かない……)
コワイワァ…… ウラギリモノガイルノカヨ……
「では私が作ったこの木の幹を掴んで答えてください、嘘をつくとヘタれるのでわかりますよ」
(…なんだと!?)
「まずは貴方から、なるべく答えられる範囲で答えてください」
「はい…えーっと…」
…
(まずい…)
「次の人ー」
(聞いたこと無いぞ…そんな植物が居るなんて!)
「次の方」
一人、また一人と裏切り者に順番が近づいてきます
(……)
「さぁ、貴方の番ですよ」
「……ぐっ……」
「どうぞ……」
ソローは嘘発見木を押し付けました
「う……うわぁぁッ!」ダッ!
「こいつ逃げる気だ!」
「そいつだッ! 逃がすなァッッ!」
男は衛兵達にすぐ抑え込まれました
「クソッ!どういうことだよ!楽な仕事だって聞いたのに!」
男は何やら悪態をついています
「こいつなんか言ってるぞ…協力者がいたのか……!?」
「処罰を遅らせるためデタラメを言ってるのかも……!」
「いえ、一般人が手に入れられる毒の範疇を超えてますので協力者は居るでしょうね」
「お前には聞きたいことがたくさんあるからな……全部吐いてもらうぞ……」
「はい、後は頼みます。いやー……適当な嘘が効いて良かったですよ。この木、実はなんでもない木なんです」
「おまえそれハッタリだったのか……」
こうして王妃様に毒をもった犯人自体は見つかり
料理に毒が混ぜられることもなくなったのでした
「めでたしめでたし……と言いたいけど恐らく居るであろう主犯は見つかってないし、これからも王妃が狙われる可能性は十分あるだろう……依然気の抜けない状態だ……」
「私は毒薬がどこから入り込んだのか探ってみます」