王妃が倒れた
ゴールド王妃が倒れた一報はすぐに国全体に広まった
美しく、気品に溢れ、優しい王と共にいつも幸せそうな王妃のことが、国民は皆大好きだったし
赤ちゃんも産まれて、この幸せはずっと続くと皆疑っていなかったのでした
それだけに国全体が悲しい空気に満たされました
今では城に閉じこもり一日中寝たきりで過ごしているのです
「申し訳ございません……できる限りのことをしたのですが……」
「ええい、そんな話は聞き飽きたぞ!もういい! 立ち去れ!」
日々弱っていく体をお医者さんの薬でなんとかもたせているだけで、なかなか回復に向かわず
だんだんと王様もストレスで心が荒れてしまったのでした
「いやすまん……待ってくれ……ゴールドは後……どれくらいもつと思う……?」
「はっ……ちゃんと栄養を取って体を休ませればきっと……」
「どれくらいもつかが聞きたいんだ……」
「……私の経験上もって……後……1~2ヶ月かと……」
「後……1ヶ月だと……?」
(後1ヶ月……長くない時間だ……どうする?……見込みの無いまま苦しい闘病を続けさせるのか……)
王妃の美しかった顔も髪も今では荒れてしまい枯れ木のようになっていました
(それとも最期くらい自由にさせてやったほうがいいのか……もう随分娘を抱っこすらできていない……)
「あ……なた……」
途方にくれていると寝たきりの王妃がしわしわの口を無理やり動かして話します
「……! ……ゴールド! ……何だ!? 何か言いたいのか!?」
「わたし……絶対負けません……きっとまた……元気に……ゴホッ!ゴホッ!」
たくさん話したぶん多くの空気が久しぶりに気管を通ってむせてしまいました
「おぉ……無理をするな!」
(……ゴールドはまだ諦めていない……なのに私が諦めてどうする……!)
「国中の医者にはもうあたったか?」
「はい……そうなると次は……」
「魔術師だな……」
王様は最後の頼みとして魔術師に頼ることにしました。
この世界、悪い魔女以外にも魔法に関わる人は結構います。
魔術師とは昔から悪魔と契約して人並みはずれた力を使う存在とされ、
近年まで恐れられて距離をとられていたのが普通でした
「協力してくれるだろうか……」
王様は国内外問わず心当たりのある魔術師全員に電報を送りました
雷の魔法使いと呼ばれる特別偉い魔術師がいます。
その人が誰でも電気が使えるように電池を作ったおかげで電気が使えるのです。皆結構快適な暮らしを送っています。
特技で他人の生活を豊かにし、報酬を受け取り暮らすのも魔術師のあり方の一つです。
彼の存在から魔術師の地位が向上して、実益を求め宗教が生活の中心から外れた今では魔法学校まであります。
「その雷の魔法使いは会社経営が忙しくて来ず」
「我が国出身で一番友好的な水の魔法使いも、他国の干ばつ地に雨を定着させに行って、電報を送っても帰ってくるのに1ヶ月じゃ間に合いませんね……」
魔術師ならみんなある程度電気も、水もあやつれるのですが、
この二人は、それぞれの分野で別格に腕が立ち、専門外の魔術にも秀でていました。
今回王様達はその知識をアテにしていたのでした。
「他の魔術師だと今度は専門外に対応できませんし……」
色々な自然的なエネルギーを、悪魔との契約で操れる魔術師ですが
今の所治療に関する魔術は切り傷を塞いだりするくらいで
長く蝕む病を治せるものはありません
「もう終わりなのか……」
「……あっ」
「どうした?」
「えぇっ……いえ、なんでも……」
「申してみよ!」
「はい……えー実はあと一人いまして……いや、それが……正規の魔術師じゃないのです」
「というと?」
「魔法学校を途中でやめてるのです。だから卒業したことになっておらず。魔術師としては本職じゃないのです」
「流石に中退生はなぁ……」
「ですよね……忘れてください……」
「…………なぁ、ただの中退生をなんで今思い出したんだ?」
「えっ」
「他の魔術師にない強みがあるのではないか?」
「えぇ、在学中の話になるのですが……彼は植物の魔術に秀でていたんです……」