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どらどら  作者: 細雪
1章、拾われたどらどら
38/42

38、水の国、辺境都市-3

「今日はオレが相手だぜ、古代竜!よろしくな!」

『えすてれらだよお』


 今日はやんちゃそうなお兄さんがわたしの担当らしい。

 お兄さんは、握手のつもりなのかわたしの前足を握ってふりふりしながら、にかっと笑った。


「おう!じゃあエスだな!言いにくいし。オレはキリな!」

『うん。きりはりゃくしかた、みなといっしょだね』

「みな?」

『うん、みな』


 キリは首をかしげていたけれど、わたしは説明しようがないので放っておいた。


『それより、きょうはなにする?』

「あ、ああ。昨日はなにしてすごしたんだ?」

『てんいのれんしゅう!』

「はっ!?あんな苦行をやったって!?おまえちっこいのに根性あるな!?」

『それほどでもぉ』


 やけに驚くと思っていたら、どうやらキリは転移を習おうとして挫折したくち(・・)らしい。

「大の大人だって音を上げるんだぜ、あれ」と、いいわけがましく言っていた。


「……うっし!昨日がんばったなら今日は遊ぶぞ!」

『なにしてあそぶの?』

「ふっふっふ……。それはついてからのお楽しみ、ってな!」


 キリはわたしをひょいと抱きあげ、外にでて歩きだした。

 いったいどこに行くのかと思っていたら、案外すぐに立ち止まった。視線の先には10人くらいの子どもたちがいる。

 子どもたちの方も、早々にキリに気づいて、わっと駆け寄ってきた。


「キリだ!」

「ひさしぶりじゃん!」

「今日はなにして遊ぶー?」

「よう!ひさしぶり……ってほどでもなくね?まあいいや。今日もオレと一緒に遊んでくれるか?」


 子どもたちとキリは顔見知り……というよりは、遊び友達のようだ。キリはなにを思って彼らに声をかけたのだろう?


「しかたないなあ!……と言いたいところだけど。でもキリ、今日はおれたち遊ばないんだよ」

「んお?そうなのか?じゃあなにすんだよ」

「修行だ!」


 ちょうど振り回しやすそうな木の枝を誇らしげに掲げたのは、いかにもガキ大将っぽい男の子。まわりの男の子たちもそうだそうだと、目をきらきらさせている。

 残りの半数、つまり女の子たちは、半眼でしらーっと男の子たちを眺めていた。どうやら彼らと彼女らでは、温度差があるようだ。


「修行?へえ、いい心がけだな。この!水の勇者一行の一員である!オレも協力してやろう!!」

「そうこなくっちゃ!」


 男の子たちは歓声をあげるけれど、面白くなさそうなのは女の子たちだ。


「ええーっ、キリったらこの前も棒遊びしてたじゃない!あたしたちとお花摘みにはいつ行ってくれるの!?」


 意外なことに、キリは女の子にも人気らしい。


【年上の、一緒に遊んでくれるお兄さんなんて憧れの的だよ~!】


 美奈が言うにはそうらしい。

 わたしにはいまいちぴんとこない。わたしのまわりなんてみんな年上だもの。


【エスちゃんは恵まれた境遇にいるんだぞぅ!このこの~!】


 美奈、ちょっとうっとうしい。


【がーん】


 美奈が静かになったので、わたしはキリを見上げた。


『ねーきり、わたしはわたしは?』

「ん?おお、そうだったな!」


 キリさん、さてはわたしのこと、忘れてましたね?


「わ、キリが抱っこしてるの、お人形じゃなかったんだ!」

「しゃべれるの?かわいい~!」


 女の子たちが、ふくれっ面を放り捨てて、目を輝かせながら殺到してくる。

 わたしの腰が引けたのがわかったのか、キリは「優しくしてくれよ?まだちっちゃいからな」と注意してから、女の子のひとりにわたしを預けた。


「うっわあ……!ふわっふわ!」

「目の色、すごく綺麗だね!」


 わたしは、わたしに夢中な女の子たちにファンサービスをしつつ、ちらりとキリをうかがった。

 自分も棒きれを持って、いっせいに飛びかかってくる男の子たちをいなすキリは、なんだか大層輝いて見える。


『まったく、しかたないなあ』







 明くる日、わたしはあくびを噛み殺しながら、ひっそりとためいきをついた。

 今日はまじめそうなお兄さんと留守番なのだけれど、このお兄さんがほんっとうにまじめで……。わたしを炎の勇者一行から預かるんだから、万が一のことがないようにと言って、リビングからすら出してもらえないのだ。

 ……わたしのこと、子犬かなにかと勘違いしてない?


 そしてお兄さん自体はわたしが座るソファーの向かい側で、優雅に読書している……。


『……まが、もたない……』


 ついぽつんとつぶやいてしまって慌てたけれど、ちょうどキリが飛び込んできたので、わたしの声はかき消された。


「見つけたぞ!!」


 なにを?

 とっさにそう思ったわたしは、みんながなんでいないのか思い出すべきである。


 そう、つまりは。


「月華草か?」

「もちろん!」


 ……ということのようなので。


読んでくださりありがとうございます。


前回に続き、またもや間が空いてしまいました!申し訳ないです!

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