37、水の国、辺境都市-2
間が空いてしまった!!すみません……!
それと、今回試験的にひらがなを増やしたりなどしております。
柔らかい雰囲気にしたくてですね……。ひらがな多すぎて読みにくくなっていたりしましたら教えてくださると嬉しいです。
夜になると、みんなが帰ってきた。
「今日はね、森に面してる浅い場所をさらっと見てまわったけど、それらしいところはなかったんだ」
『そうなんだあ』
わたしに報告してくれたイドラちゃんは、けろりとしていて全く疲れた様子ではなかった。
他の面々もそれは同じだったけれど、水の勇者一行のメンバーとヒリンさんは、ややお疲れぎみのようだ。
「さすがはあの炎の勇者一行ね。同じ勇者一行の名にかけて、鍛えなおさなきゃ」
転移布のお姉さんが、ぐったりした様子で、ためいきまじりにぼやく。
「私は本来学者なので、森の捜索などはちょっと……」
ヒリンさんも、美少年顔がいつもの2割ほど、きらきらを失っているようだ。
「明日はもうすこし奥の方に向かうから、今のうちに英気を養っておいてくれよ」
「うへあ……了解です」
水の勇者一行の、人なつこそうな男の人がうめくと、もうひとりのまじめそうな男の人が、すぱーんとその頭をはたいた。
「失礼な物言いをするな。スーラ様の水の勇者としての評判につながるだろう」
「考えすぎだって!」
「考えすぎなものか。だいたいおまえは日ごろから……」
「口うるさっ!おまえはオレのかあちゃんか!」
ふたりはそのまま言い合いをはじめたけれど、スーラはまったく気にした様子でないので、日常的にみられる光景なのだろう。
「シンとキリはほんと仲良しねえ。嫉妬しちゃうわ」
転移布のお姉さんがちゃかすと、ふたりの男の人は声をぴったりそろえて「仲良くない!」と主張した。
「息ぴったりだね」
「「ぐぬぬ……」」
【わあ、現実でぐぬぬっていうひとはじめて見た】
はじめて会ったときには、全員まじめで私語なんてなさそうな印象だったのに、今ではみんな、個性豊かであくが強い感がすごい。
実力者には個性的な人が多いのか、たまたま印象的なひとと出会っているだけなのか、どちらだろう。
「ああ、そうそう。明日はあたしがちびちゃんと留守番するからね」
思い出したようにそう言ったのは、転移布のお姉さん。
『てんいふのおねーさん!よろしくね!』
「ナシャ、だよ。よろしく、ちびちゃん」
みんなを見送って、ナシャさんとふたり、借りた家のリビングで向き合った。
「なにしようか?スーラ様とはなにしてすごしたの?」
『うんとね、あるふぉんすのはなししてたよ!』
わたしの返事に、ナシャさんが……なんというか、なまぬるい顔になった。
「ああ、炎の勇者様の話をね……」
『すーらってかわいいよね』
「ちびちゃんには言われたくないと思うけど……うん、そうなのよ!スーラ様はかわいいのよ!」
なんだか、その『かわいい』の中には、無数の意味が詰まっているんだろうな、と感じさせられる『かわいい』だった。
『んー……。あ、そうだ!なしゃさん、わたしにてんいのやりかたおしえてほしいな!』
「お、おう……ちびちゃんはマイペースなのね……。いいけど、そんなにすぐに身につく技術じゃないわよ?」
『じゃあ、れんしゅうのしかた!』
わたしが精一杯のかわいい顔でおねがいすると、ナシャさんはきりりとした顔でうなずいた。
「ほほう、やる気はじゅうぶんみたいね。なら、あたしがやってた練習法を教えてあげる」
『わーい!』
……教えてもらえるのはいいのだけれど、かわいい顔は通じていなさそうだ。おかしい、イドラちゃんはめろめろだったのに。
「えらそうに言ったけどね、転移の習得方法は単純で、何回も転移を経験して感覚で覚えるだけなの」
『ひとりじゃできないね、それ』
「そ。それもあって転移を覚えてるひとが少ないの」
そして、転移を簡単に習得できないもうひとつの理由はすぐにわかった。
『ぶえええ』
「よし、じゃあちょっと休憩ね」
転移のあのふわっとする感覚、あれは何度も経験すると、気分が悪くなってくるのだ。
わたしは、吐きそうになるのが5回をすぎてから、数えるのをやめた。吐き気をこらえるのに必死すぎて、そんな不毛なカウントをしている場合ではなくなったので。
「……転移の練習ってつらいでしょう?」
『ぶえ……。うん、こんなにつらいとおもわなかった』
「やめてもいいのよ?」
ナシャさんの悪魔のささやきに、わたしはノータイムで首を横に振った。
『んーん。やる』
「ちびちゃんは、なんで頑張れるの?この習得方法がつらいからってあきらめた人はごまんといるのに」
『うんとね』
わたしは少し首をかしげて考えた。
『ほのおのゆうしゃぱーてぃはみんな、かけがえのない、かわりのいないひとたちでしょ?』
「そうね」
『わたしいがいはね』
ナシャさんが目を丸くする。
『わたしはね、みんなとずうっといっしょにいたいんだ。だから、わたししかできないことをみつけなくっちゃ』
「ちびちゃん……」
ナシャさんはおもむろにわたしを抱っこした。
お上手ですね!抱っこ。
「ちびちゃんは、ちびちゃんが思ってるよりもかけがえのないメンバーだと思うけどね……でも、こんなに小さいのにえらいなあ。これが古代竜なのね」
いや、わたしはふつうの古代竜よりもぽんこつだと思う。
「よおし!じゃあ張り切って転移の練習しよっか!」
『うん!』
けっきょくわたしたちは、日が沈むまで転移の練習に明け暮れた。
ナシャさんによると、才能のあるひとは2~3ヶ月、普通のひとだと半年は練習を続けないとならないらしい。
うーん、果てしない。
読んでくださりありがとうございます。
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ブックマークする価値を見出してくださった方が100人以上って凄いことですよね……本当にありがとうございます。




