1、プロローグ
人外転生(?)です、よろしくお願いします。
長めの連載になればいいなーと祈りつつ、更新していきたいと思います!
寒くて寒くて、目が覚めた。
空気はきんと冷えていて、耳鳴りがしそうな程に静か。身体の半分がじんじんと痺れるように痛い。
目を開けたら、真っ白な雪原の中でわたしだけが独りぼっちだった。空は薄紫色をしていて、星も月もいない。見えない。
わたしはとても、そう、とっても心細くなって、喉から声を絞り出した。
誰か、と呼んだ筈の声は何故だか、いかにも哀れっぽい子犬のような情けない鳴き声となってか細く消えていった。
わたしは何度も『誰か』を呼び続けたけれど、しんとした雪原には悲しい程何の変化も無く、わたしの意識はいつの間にやら暗転していた。
「ーーいたーーーーこよ!」
「なんーーーーは?」
騒がしい話し声がして、意識がほんのり浮上した。
しかし、眠る前まで感じていた痛みも寒さも、麻痺したかのように感じない。恐らく、わたしは死に掛けている。
誰かいるなら助けてほしいが、最早鳴く気力も無く、わたしはまたずぶずぶと抗い難い眠りに引き摺り込まれたのだった。
……優しい旋律が聴こえる。
女性がハミングしているのだろう。聴いた事の無い曲だけれど、暖かな気持ちにさせてくれる曲。
わたしはぼんやりとしたまま瞼を持ち上げる。
最初に視界に入って来たのは炎だった。ぱちりぱちりと爆ぜながら、大きな暖炉の中で炎が踊っている。
赤々とした炎を眺めていたら、頭上から聴こえて来ていたハミングが止まった。
段々と思考を取り戻して来ていたわたしは、首を持ち上げて、ハミングしていたであろう女性の顔を見上げる。
女性はゆるゆると見開いていた目を細めると、柔らかい声で話し掛けてきた。
「あら、目が覚めたのね。気分はどう?具合は悪くないかしら」
「きゅう」
大丈夫、と言おうとしたが、やはり口から漏れるのは高くて可愛らしい鳴き声だけ。
「……あら?喋れないのかしら」
「きゅう?」
「きっと赤ちゃんなのね、あなた」
【動物は普通、喋らないんじゃ?】
わたしの頭の奥で声が聴こえた。そうなのだろうか。わたしには分からない。
「何か食べたい?それともまだ眠る?」
そう尋ねられて意識した途端、くあっと欠伸が漏れた。
「ふふ、眠いみたいね。お休みなさい」
柔らかな手に優しく頭を撫でられると、自然と頭が下がってくる。
わたしは眠気に逆らわず、揃えた前脚の上に顎を乗せて目を閉じた。