8・フィールドに出てみた
~始まりの草原~
「それで人間は何処にいるの?」
「さぁな。人間達は冒険者として行動している設定だし、フィールドにいる奴は何らかのクエストを受けているってことだろ? ならその辺にPOPすること無いだろうし、居そうな所に行くべきだろうな」
「クエスト?・・・ポップ?」
「なまけもの。ユウさんがフリーズしてる」
始めたばかりの頃はゲーム用語って分からないよな。
「すまん。えーっと・・だな。クエストってのは依頼で、POPってのは出現するって事で・・・」
「???」
「クエストは、困っているけど自分で出来ない人が〈あの魔物を倒して来て〉とか、〈この薬草を5個取って来て〉などのお願いを、報酬をつけてやってもらう依頼のこと。ポップは敵が出現する事を言うんだ。例えば「このモンスターって何処に出るの?」って聞かれた時に、「あの草原の丘付近にポップするよ」みたいな感じ」
「そう! それ!!」
「何となく意味が分かったわ。じゃあさっきなまけものの言った内容は「フィールドにいる人間は何かしら依頼を受けているから、何も無い所には居ない」って事でいいのよね?」
「そういうこと」
「ポンタはこの辺りで人間の居そうなって場所って何処だと思う?」
「え? ええ・・と、そうだな」
急にそう言われてもなぁ・・・。
草原だろ? 見渡す限り何もないんだけど、居そうな場所ってあるのか?
考えているとユウさんが急にしゃがんだ。
「ポンタ、これ・・・」
「ん? これが何?」
そこだけ草がない。
草がない線が遠くまで続いていた。
「これ道でしょ? 人が通る道じゃないかしら?」
「そうかも」
それが?
「ああ〜! じゃあこの道歩いていたら人に会えるかも!」
「あ! そういうことか!」
気付かなかった・・・。
「ああ、そういうことね!」
なまけもの、お前もか!
確かにココアの言う通りだな。
「居たな」
「居たわね」
「居たけど何してるのかな?」
何しているんだろう?
道から少しズレたところで何かしている。まぁ敵なので気にしてもしょうがないけど。
「こっちには気付いていないみたいだし先制攻撃のチャンスじゃないか?」
「そうだな。危険も少なそうだし。誰から行く?」
「わ、私はちょっと・・・」
「私が行けばいいのかしら?」
「いや僕が行ってくるよ。僕なら草むらでも隠れられる」
「おお、そうだな。なら俺たちパーティの初攻撃を譲ってやるよ!」
「任せとけ!」
ステルス攻撃なら他のゲームでもしてきた。このゲームでは初めてだけど出来るはず。
ユウさん達も見てるしミス出来ん。
僕は草むらに隠れて人間に近付く。
コントローラーのスティックをちょっと傾けたように、そろり、そろりと標的へと歩を進める。
よしここまでくれば。後は『毒牙』で噛みつけば・・・
『む?』
毒牙、と言おうとすると人間がこっちを向く。気にして無かったから気付かなかったが、ダンディなオッサンだった。
一瞬目が合い・・・瞬殺された。