81・荒野エリアに行ってみた②
「ああ・・・こうなってたんだ」
明るくなった荒野エリアを探索。荒野と言われるだけであり、草は殆ど生えてなくて地面は乾燥でひび割れており、所々地盤が陥没しているのか大きな凹みがある。
取り敢えずさっき死んだところに戻ってみたけど、そこにも大きな陥没があり、更に凹みの底には紫色の毒毒しいヘドロのようなものが溜まっていた。
取り敢えず試しでなまけものに降りてもらい、ヘドロのようなもの効果を確認。猛毒状態となったなまけものを見てダメなやつだと確信する。
「アレが猛毒状態の原因か」
「みたいね。この凹み深いし、さっき私達が落ちたのはこれね」
「その前に助けてくれぇ!!」
なまけものはココアの『ヒーリス』と『ヒールサークル』で何とか猛毒状態を相殺する。流石猛毒とだけあって『ヒーリス』だけでは相殺できなかった。
まぁ何とかなりそうだし話を凹みに戻す。
どうやら僕らが落ちたのは冒険者が仕掛けた落とし穴の罠ではなく、ただのフィールドの段差だったようだ。
冒険者が、[落ちた瞬間ほぼ確実死の猛毒落とし穴]なんてくそトラップを仕掛けてなくて良かったと思うが、同時にこのエリアの理不尽さにやる気が無くなる。
なぜかと言うと、このエリアはほかと違って空に雲がかかって全体的に暗い。夜もそのままなので月が隠れてしまい、月明かりが無い分他のエリアより暗く、僕らの目では段差すら気付かなかった。
つまりここは夜目がきく夜行性の動物が有利なフィールドなのだ。飛べる魔物も地形に影響されない分有利ではあるが、見えないので夜目のある魔物と戦う場合はかなり不利だ。
「面倒なエリアだな~」
「別に来なきゃいけないエリアじゃないしいいんじゃない?」
「だよね。夜以外なら他と変わらないし」
みんなの意見をまとめた結果、このエリアには基本来ないという結論になった。来るとしても昼の時間帯に限定し夜の時間は来ないようにする。
ここで他のプレイヤーに攻撃されたらほぼ負けるしさ。
「まぁしゃあねぇよな。 幽霊は違う所で探すか・・・」
「別に幽霊は探さなくて良いんだけど?」
「え~! 面白そうだし探そうよ~」
ユウさん。幽霊探しにはあんまり乗り気じゃないな。
もしかして・・・
「ユウさんって幽霊とかダメな方?」
「うっ・・・まぁちょっと苦手かな。子供の頃に見た心霊写真がトラウマでね・・・」
「心霊写真? テレビか何かの?」
「ううん、普通に撮ったやつ。家族で出掛けた時に父が撮ってくれたのだけど、1枚だけ私に撮らせてもらったの。私はそれで気に入った花畑を撮影したんだけど・・・」
話すユウさんのトーンが徐々に下がり、一旦区切る。僕らは次の言葉をジッと待つ。
「花が全部人骨になっててこっちを見てたの!」
「「「え?」」」
無意識に気の抜けた声が出てしまう
あれ? 思ってたのと何か違う。てっきり誰かが写ってるのかと思ったんだけど・・・。
「それだけ?」
「そうよ、怖いでしょ?」
「ごめん、全然怖くない」
「むしろ内容的には面白そうなんだが・・・」
なまけものの意見に頷く。
まぁ子供の頃だと怖いと感じるかも知れないが、今だと面白そうだと感じてしまう。というかそれって合成じゃないの?
「違うわよ! デジカメ上では普通の写真なのに印刷すると変わるの! 何度やっても変わるの!! しかもそれだけ!!」
「まぁまぁ・・・」
興奮してきたユウさんを宥めつつ、考える。そう言われると心霊っぽくあるけど、普通撮った時点で変わるもんじゃないの?
「分かんないわよそんなの・・・。一応父がカメラ毎お寺に持って行って供養してもらったら無くなったけど。その時聞いた話だと、その花畑の場所が元は戦争の集団墓地らしくて・・・」
「「「・・・・・」」」
それ聞くとマジっぽくなるな。
「でそこの遊園地・・・あ、その花畑があるのは遊園地の中でね、その遊園地を作るために墓地を無理やり変えちゃったらしいのよ。そのせいか知らないけどその遊園地って事故も多いし、雰囲気暗いし、お化け屋敷に本物出たとか噂になるし・・・」
「えと・・・その遊園地って今もあるの?」
「ええ。心霊スポットとしてその手の人達には有名らしいわ」
「「「・・・・・」」」
僕たちは一旦顔を見合わせる。
さっきの面白そうという感情は綺麗さっぱり消えていた。
完全に無口になった僕達にユウさんが訪ねる。
「で、どうするの? まぁゲームだから幽霊って言ってもバグか何かでしょうし、探すというのなら嫌とは言わないけど」
「も、もう良いかな・・・」
なまけものは完全にビビっている。
ありゃもう探さないな。
次回更新は明後日の予定です