80・荒野エリアに行ってみた①
~火曜日夜~
「てな話しててさ。だから日曜とか多分抜ける」
「「「分かった」」」
「あれ・・・そこは「え~!!?」って言ってくれるところだろ?」
「「「いや別に」」」
荒野エリアに向かう途中、なまけものが真剣な顔で「話がある」っていうから何かと思えば・・・
どうやら日曜日など予定がない日に他のメンバーでやるとのことらしい。別にこのメンバー以外とやるななんて約束はしてないし、好きにしてくれて構わない。
「そっちは職場の先輩たちもやってるんだ?」
「まぁ先輩って言ってもみんな独身で若いしさ。ユウのところは居ないのか?」
「居ないわね。・・・まぁ聞いてないんだけど。「私ゲームします」って見た目の人居ないから聞き難くてね・・・」
「あたしは、指導員の人がやってるって!」
「僕もそう。あ、でもパーティ勧誘は断ったな」
柳先輩のパーティは3人らしいので「どうだ?」と言われたが、めんどくさいし適当に理由をつけて断ったのだ。
「何で?」
「だって職場の先輩と日曜日も一緒とか嫌だし。みんな同期だから気楽にできるけど、先輩だと気を使って面倒」
「「分かる!」」
「・・・確かに」
ユウさんとココアが頷き、なまけものも気付いたのかちょっと考えた後に同意する。
柳先輩は「ゲームだから気にするな」と言うだろうが、限度があるしタメ口使うわけにもいかない。仮にタメ口とかOKでやってると、今度は現実でタメ口になりそうだからな。
「むむむ・・・。まいったな。もうフレ登録までしてるし・・・」
「別にいいんじゃないか? 毎週日曜日にやるわけじゃないんだろ? 自分が暇した時に一緒にやればいいと思うけど」
「そうだな・・・」
「大体今この話で時間を潰して良いのか? 早くしないと朝になるぞ。そうなったら亡霊出てこないんだろ?」
「おっと、それはいかんな」
考えこんだためかなまけものの歩みが止まり、つられて僕たちも止まる。
荒野エリアには入っているが、入口付近だからか周囲に野営地や冒険者の幽霊は見えない。
他のプレイヤーは沢山いるけど。
「大体こんな所でボーッとしてると襲われるかも知れないしさ、取り敢えず何処かの野営地まで行こうよ。一応荒野エリアの冒険者の強さ見ときたいし」
そもそも荒野エリアに来たのは初なんだよな。
だからまだ冒険者の強さとか地形とか何も知らない。今は暗いから遠くも見えないし、このエリアの情報が少なすぎる。
このエリアの適正レベルは23らしいので僕らのレベルよりも高い。まぁレベル2程なら、調子に乗らない限りは負けないけどさ。
「悪い。そうだな」
「じゃああそこの野営地から攻めましょ」
「「「了解」」」
ユウさんが1番近くにある野営地を見つけて指差す。
僕らは今までと同じスタイルで野営地攻めを開始した。
が・・・
「ちょっと待てやぁ!! 落とし穴とか卑怯すぎるし、猛毒入りとかもう嫌がらせだろうが!!!」
「あはは、落ちた瞬間笑っちゃった。一瞬だったわね」
「ポンタだけボコられてた。あ、動画撮ってるけど見る?」
「見ない・・・」
「あ、私見せて。なまけものが邪魔で見えなかったのよね」
オアシスでキレるなまけものを尻目に、僕のボコられ動画を見て笑うユウさんとココア。
野営地に近づいたまでは良かったのだが、ある程度まで寄った所でココア以外が穴に落ちた。暗くてよく見えなかったけど、どうも冒険者が掘った落とし穴(底に猛毒入り)だったようで、落ちたユウさんとなまけものは猛毒状態→死亡。猛毒が効きにくい僕と、落ちなかったココアは、魔法と弓矢の集中砲火を浴びた。
そしてあっさりとオアシスに送迎されたのだ。
「もう一回行くぞ!!」
「良いけど、ゲーム内時間はもう朝よ」
「マジで!?」
既にゲーム内時間は5時を回っている。今から移動しても荒野エリアで探索する頃には朝になり、冒険者が彷徨くだろう。
「今日は幽霊無理かな。普通に荒野エリア彷徨かない?」
「そうね」
結局今日も幽霊には会えないようだ。
次回更新は明後日になります
宜しくお願いします