66・薬について考えてみた
「結局のところこの薬を使うと進化するってこと?」
「そういうこと。用量は分からないけどさ」
僕は大量に飲んだから進化したのかもしれない。もしかしたら1錠程度では進化せずにドラッグと同じような効果が出たのかも。
そう予想を言うと、なまけものが否定した。
「いや、多分1錠で進化すると思う。多分これ即効進化剤だと思う」
「何それ?」
即効進化剤? そんなのヘルプにあったっけ?
調べようと思いヘルプ画面を開けてみると、膨大な量の項目が出てきた。探すのがめんどくさくなり、そっと閉じる。
「即効進化剤はネット上での造語だ。公式の説明項目には一切無いけど、その事例に対して「バグではない」と発表している。発表したのはバグ報告が何件か上がったからみたいだな」
「隠し要素みたいなもんか?」
「そんなとこ。効果は即効進化剤の名前の通りで、進化先が全く出てなくても食った瞬間すぐ進化するらしい。但し、進化先が選べないのと、1プレイヤーにつき1回だけしか使えない。まぁ後者は使えたって言うプレイヤーも居るからまだ検証中らしいが、連続使用は出来ない仕様になっている」
「そうしないとすぐ進化して終わっちゃうもんね」
これはあくまで中々進化できない人への救済処置なのだろうか。ただ普通の進化と同じだと不公平が出るから、運要素を入れたのだろうか。
「ネットに情報が出てるって事は、他にもあるの?」
「ああ、変わった形の木の実だったり、草原に落ちてた石だったり、その辺飛んでる虫だったり」
「木の実と虫は分かるけど・・・誰、最初に石なんて食べた人?」
「さぁ? 流石にそれは知らんわ」
落ちてる石食うとか、進化意識しすぎだろ。多分物質系の魔物の人なんだろうけどさ。
「まぁそれは置いといて、この薬もその即効進化剤の1つって事なんだな?」
「多分な。というかお前の話を聞く限りそれしか考えられん」
確かに、今なまけものが言った事と、僕に起きた事は一致する。しかしランダムかぁ・・・、ドラゴンになったら最高だったのに。よりよって蜥蜴とは・・・。
説明を見る限りは強そうだけど、個人的にはハズレだな。
「ふーん・・・」
ユウさんは瓶を開けて数錠を手に取る。それをジィッと見始めた。その後僕を見る。
どうするか迷っているのかな? もし今進化したい進化先が出ているのであれば飲むのはオススメしない。好きな進化先に進化できるこのゲームで進化先を選べないのは結構大きなデメリットだからな。
「まぁいっか」
ユウさんはもう一度錠剤を見てから、それをポイッと口に放り込む。そしてそのまま飲み込んでしまった。
「え?」
「ちょ!?」
まさか飲み込むとは思わなかった。
進化先分からないけどいいの?
「多分大丈夫。変なのにはならない筈」
ユウさんは何か考えがあるようだ。目を閉じて進化を待つ。
そしてすぐに進化が始まった。