63・ドラッグを探してみた
ユウさんの要望に合いそうな物を持っている冒険者に会うため、湖畔エリアを彷徨く。あのデカい図体ならすぐ見つかるかと思ったけど、なかなか見つからない。
「そのドラッグって、お前が1人で倒したあのでかい奴だよな?」
「ああ、あいつ薬でドーピングしてたからさ。その薬奪って使ったら一時的に強くなれるんじゃないかと思う」
探しているのは、野営を攻めた時に会ったドラッグだ。戦闘中に飲んだ薬でパワーとスピードが上がっていたのは確実なので、それを使えばユウさんも強くなれる筈。問題は『追い剥ぎ』で薬が取れるかどうかだが、それは試してみないと分からない。
「しかし、その薬って魔物にも効くのか?」
「それも分からないし、それで進化できるかも分からない」
「そうよね。でも試す価値はあるわ」
「あ、見つけたよ!」
名前:ドラッグ
職種:冒険者
レベル:18
ランク:D
話してると上からココアの発見報告が聞こえて来る。マーキングもしてくれたので、ドラッグの方向も分かった。そっちを見ると相変わらずの巨体が豪快な動きでドスドスと歩いている。レベルリセットされたようで、前回戦った時よりもレベルが低い。
レベルリセットは、プレイヤーを倒して上がった冒険者のレベルを設定値まで戻す仕様のことだ。毎週何処かの曜日の0:00分にリセットされる。曜日はランダムに設定されており分からないようにされている。
「じゃあドーピングされる前に速攻で倒すか・・・。攻撃力が高いから気をつけて」
「分かったわ」
「おうよ」
「りょうかーい」
まぁ一回倒したことのある敵なので、特に苦労することも無いだろう。避け方も分かってるし、今回は前回と違って4人で、レベルもあの時より高い。何処にも負ける要素は全くない。
ドーピングもさせなかったらただの雑魚と一緒だ。他の冒険者同様、体勢崩して、毒入れて倒せばすぐ終わる。戦闘の流れを頭でシミュレーションして僕は突撃した。
『うぉりゃぁあああ!!』
「わぁあああ!」
無防備に突っ込んだ僕は、振り向きざまに振り回してきたハンマーに直撃した。ホームラン性の打球のように大きな弧を描いて地面に頭から突き刺さる。HP? 残ってるわけないじゃないか。
レベルが上がってもドラッグの一撃でHPは消えてなくなった。
「! ポンタ何してるの!?」
「お前・・・」
「あはははははっ」
ユウさんが相対しながらこっちを見て叫ぶ。
突き刺さる前、飛ばされた先の近くに居たなまけものは呆れ顔が見え後からココアの笑い声が聞こえる。
ポンタ :後頼んだ・・・
「ちょっと待ってよー!?」
声が出せないので、チャットを送信。
反転する視界の中、ユウさん達の声が聞こえた。