605.獅子王さんと戦ってみた⑧
「決まったー!!」
「煩さっ!?」
ポンタの『ミストブレス』でお父さんが吹き飛ぶ。実況中のココアがここぞとばかりに叫ぶ。近距離からの一撃に、流石のお父さんもかなりのダメージを負う。
しかし解せない。なぜお父さんは『濃霧』で固めたただの塊を殴って満足したのだろうか?
「『ミスティックフィールド』だな。ポンタのやつ、頭突きと同時に展開して獅子王さんに幻覚を見せたんだろう」
「じゃあなんで『濃霧』で作った塊のすぐ横にいたの? もし『ミスティックフィールド』にかかってなかったら・・・」
「多分『濃霧』でダミー作った後逃げる時間なかっただけだろ。まぁかかってたこと含めて運が良かったな。まぁ本当のところはどうか知らないがな」
「?」
なまけものは呆れたような顔をしている。それは何に対してか分からない。疑問に思っているとなまけものはさらに呆れた顔で、
「お前・・・、さっさと作戦始めねぇとポンタ負けるぞ? HP見えてねぇのか?」
「あっ!」
ポンタが危なそうで見入ってた。すぐに昨日入れておいた画像を開ける。それを見たなまけものが目を見開いた。
「お前、これ!?」
「ふふ、全部この時のためよ」
「おいやめろ! それはやめてあげてくれ!」
「ダメよ。お母さん!」
なまけものが何かに気づいて止めるが無視する。そしてその画像を全てお母さんへと見せた。
「・・・・・、何これ?」
「お父さんの海外でのガールフレンド」
そう、見せたのはお父さんがなまけものに紹介した女性の写真11人分。お父さんとの関係は知らないけど、コミュニケーションお化けのお父さんのことだから、恐らく会社の女性社員だろう。
しかしそんなこと、今はどうでもいい。
これを見せてガールフレンドだといえば、お父さん大好きお母さんならきっと・・・
「ガールフレンド? 浮気?」
「一歩手前」
「いや、ただの部下だーー」
作戦の邪魔になりそうななまけものにはどっかに飛んで行ってもらう。写真を提供してもらった時点でなまけものの役目は終わりだ。後はお父さんの八つ当たり標的にされないよう、私に利用され捨てられた体にしておけばいい。
ニヤリと笑う私のそばで、ごごごごごっと柳家の黒幕がその片鱗を見せ始めた。
・・・
・・・・
・・・・・
「ヤバい!? ヤバいヤバいヤバい!!」
『ミストブレス』で吹き飛んだ獅子王さんは、その無視できないダメージを無視して慌てて立ち上がった。頭をガシガシと掻きながら、今までの彼からは信じられないほど右往左往している。あまりの様子に集中力が切れそうになる。
「あああ・・・、なんだなんだ? 何したんだユウ!?」
「・・・・・」
獅子王さんの慌てっぷりからかなりやばいことになっているようだが、雰囲気的には僕には関係なさそう。
つまり・・・、これはチャンスでしかない。狼狽えている間に倒してしまおう。
「あ! お前今のうちに倒そうとしてるだろ!? タイムだぞタイム! ちょっとターイム!!」
「んなもんないわぁ!!」
両手でTの文字を作る獅子王さん。思いっきり『ミストブレス』をぶち込んだ。
次回更新は3日後の予定です。