596.勝負当日になってみた
ユウさんの気持ちに気付いていることがユウさんにバレました。
結果、ユウさんとの関係が一気にギクシャクしました。メールを送っても返信すら返ってきません。いつもなら数分で帰ってくるのに・・・。
まぁ怒っているよね。知ってて言わなかったんだし・・・。
「・・・おい、大丈夫か?」
「・・・大丈夫ですよ・・・」
そんな状態で獅子王さんとの勝負当日。
ユウさんとの関係をどうするか、いやどう謝ればいいか一晩悩んで徹夜。ついでに今までの特訓の無理が急に来て発熱。意識は完全に勝負に向いていない。結論、勝負どころではない。
何とか意識はあるものの、頭痛もあるし早めにやめたほうがよさそうだ。
体調のレベルはそうだな・・・、パワ◯ロの調子で例えると、丸い形を保っていないレベルで悪い。
「よく覚えてないんだが、昨日何かあったのか?」
「・・・いや、獅子王さんも居たでしょ・・・」
「すまん。妻に会ったあたりからあんまり記憶ないんだわ」
「・・・確かに終始固まってましたけど、記憶も残してないんですか?」
しかし獅子王さんは呑気なもので、勝負前だというのにボケをかましてくる。
もしかしてこの人自身の記憶すら都合良く消したら出来るのではないだろうか? そうであれば僕も昨日の記憶を消してしまいたい。そうすれば無かったことにできるはずだ。
「・・・どうせなら今日の記憶も消えててくればサクッと不戦勝で終わったのに・・・」
「ははは、それはない。最近の俺の楽しみナンバーワンだったからな」
「そりゃどうも」
こっちは憂鬱ナンバーワンですけどね。
そしてそこへさらなる邪魔者が・・・
「よっ、ポンタ。会ってすぐで何だが死相が見えてるぞ」
「・・・まぁいろんな意味で見えるよね」
今からの勝負の勝率、ユウさんへの対応、自分の体調。どれをとっても良くない。
しかし付き合いの長いなまけものは僕の話し方で即座に気付いた。
「あ? お前・・・まさかこんな日に限ってやらかしたのか?」
「?」
「まぁちょっと・・・。無理したかなぁ・・・」
「ヤバさはどれくらいだ? 熱あんのか?」
「測ってないけど・・・多分」
ここまではよかった。心配してくれているのかと感じ始めた直後、なまけものは大きく笑い始めた。
「ははは、ばっかでぇ! 何でよりによってこの日に体調崩すかねぇ!」
「・・・うるせぇ」
「何だポンタ君。風邪か?」
「そこまでは・・・、疲れですかね」
「仕事量が多いのか? あの部長に言っておこうか?」
「・・・いえ、そういうわけでは・・・」
この勝負だよ! と言いたい。しかし大きく声を出す気力もないので適当に流しておく。
「しかしユウはどうしたんだ? 真っ先に気付いてあーだこーだ言いそうだが・・・」
「・・・えと、今はちょっと、ね・・・」
なまけものは少し離れたところでMAMAさんといつのまにか来ていたココアと話をしていた。雰囲気的にはいつも通りな気がするが・・・。
そう思いながらユウさんを見てるとと、向こうもこっちを見た。そしてすぐ顔を逸らされる。
「はぁ・・・」
「は? 何? おい、何があった? 体調よりそっちが気になるんだが!?」
「俺も気になるんだが!?」
「・・・・・」
頭が痛くなってきた。さっさと終わらせたい。
「後でユウさんかMAMAさんにでも聞いてください。というかさっさと始めませんか?」
「・・・う、うむ。いいけど、いいのか?」
「・・・いいです。どんな状態だろうと、結果は一緒なので」
「? そうか・・・、わかった」
「あと、こいつ何処かに捨ててきてもらえませんか?」
「そうか・・・、わかった」
「いや捨てんなし! ちょっと獅子王さんっ!? タンマ! ちょいタンマっ!」
煩い声は少しして消えた。
次回更新は3日後の予定です。