593.獅子王さんと一緒になってみた
何やかんや特訓の日々が続き、とうとう決闘日の日曜日がが明日へと迫ってきた。
なのに今日はユウさんが用事があると居ないので、特訓もせずのんびりしている。すると誰かが話しかけてきた。
「ほう? ずいぶん余裕だな」
振り向いて心の中で嫌な顔をしつつ、少し心の整理をして声を出す。
「焦っても意味ないので。明日はいつも通り動けるように今日はリラックスタイムです。ダメですか?」
「いや、気持ちの調整は大事なことだ。いいと思うぞ」
「そうですか。では失礼しーー」
「何故だ? 俺と遊ぼうぜ!」
「・・・・・」
飛んで逃げようとしたが、ガッと尻尾を掴まれる。振り解こうとしたが無駄に握力が強い。
「いや離してくださいよ!」
「嫌だ。遊ぼうぜ!」
「今そっち夜中でしょうよ! 何起きて遊んでるんですか!?」
「まだ時間帯的には起きてる時間だ。それに仕事中寝てたから眠くねぇんだよ!」
「堂々とサボってんじゃないですよ!」
「寝てても会議の内容は頭に入るからいいんだよ!」
「ずるいよ。どいつもこいつも!!」
この力はカイザーさんも持っており、寝ていてもミーティングの内容をきっちり覚えてる。この特技のおかげで、発言しないミーティングは彼のお昼寝の時間となっていた。
そしてこの特技は親の獅子王さんも当たり前のように持っている。そして恐らくユウさんも持っている可能性が高い。
「羨ましいだろうぅ。この技があれば就寝時間も日本の会議に出ろと誘われるぞ」
「あ、じゃあ要らないです」
本当か分からないが、この人だと言われてそうな気がする。そしていい加減手を離してほしい。
「ダメだ。眠たくなるまで遊ぼうぜ」
「じゃあかくれんぼでもしますか? 鬼か隠れる側、どっちやります?」
「逃すと思うか?」
「・・・・・」
ダメそうだ。
諦めて一緒に適当にぶらつく。特に行きたい場所などもないので、行ったことのない方向へと適当に歩く。
「この先って何あるか知ってます?」
「いや、知らん。というか覚えてないな。少なくとも興味のあるものはないぞ」
「あっちはどうですか?」
「あっちも同じだ。だが少し行ったところにオアシスはあるな」
「寄ってっていいですかね?」
「無論だ。行こうか」
ダンジョンなどは全く無いが、この辺も既に通ったことのある獅子王さんのおかげで、たくさんのオアシスに立ち寄ることができた。獅子王さんは寄り道に嫌な顔一つせず付き合ってくれる。出来れば付き合ってほしくないんだけどね。
「ところでポンタよ。ユウとの特訓はどうだ?」
「どうもこうも、ちょくちょく見てるでしょ?」
「何だ知ってたのか? ああ、アイツから聞いたのか」
「見てるってことだけですけどね。あと女性紹介してるとか」
「まぁな。しかし結構送ってるんだが、今だにアイツの好みの女性が居ないらしいんだ。アイツどんな女性が好きか分かるか?」
「さぁ? そんな話しませんからね」
なまけものの好みはおおよそ見当がつくものの、あまり興味はない。だが現在この紹介のせいか、あの日以降、なまけものとココアの仲がよくない。と言ってもケンカしているわけではなく、ココアがなまけものを避けているだけだが。
原因はよく分からないが、ココアの不機嫌が始まったのはこの紹介がバレた時からなので、多分これが原因で間違いないだろう。
ユウさんは「放っておいて大丈夫」と言っているのでとりあえず放ってはいるが、もっと長続きするようだったらやめてもらった方がいいだろう。
とりあえずそのことを獅子王さんに伝えておく。
「そうか。なら一旦止めるか。紹介できる人数もそんなに多くないしな」
「思うんですけど、どこでそんなに女性と知り合うんです? まさか・・・」
「ナンパなんてしてねぇぞ。大半は会社だ。ふらつきながらいろんな人から不満などを聞いて回ってると、それなりに話すようになるんだ」
「へぇ・・・、そうなんです・・・ん?」
「どうした?」
「あ、いや、ちょっとチャットが」
表示されたのはユウさんからのチャットだ。[今から合流できないか?]と書かれている。
「嫌な予感がする。会わないほうがいいぞ」
「あ、もう今から行くって返しました」
だって逃げれるチャンスだし。
次回更新は3日後の予定です。