582.特訓してみた①
「さぁ! 特訓するわよ!」
「帰ってきたばかりなんですが・・・」
「それはごめん。でも時間無いの!」
出張から帰宅後早々ユウさんに言われてログイン。ログインすると「待ってたわ」と言わんばかりのユウさんが待っていた。なまけものとココアはまだのようだな。
まぁ今日の仕事午前だけで、午後はほぼ移動だけだったのでまだいいけど・・・。
「・・・ところでポンタ・・・」
「ん?」
「今日私からメールって届いてた?」
「メール?」
多分アレかな? 丁度獅子王さんからやカイザーさんから届いてたのと一緒くらいのタイミングで来たやつかな? 何かすぐ消えたけど。
答えようとすると、ユウさんは手をブンブン振って、
「あ、知らないならいいの! 宛先間違って送っちゃって・・・。すぐ消したんだけど、もしかしたらって・・・」
「ああそうなんだ。気付かなかった。獅子王さんからのメールは来てたけどね」
消えたのはユウさんが消したからか。どうやら見られたくなかったメールらしい。
まぁ内容は完全に僕宛だったし、内容的にやっぱり恥ずかしくなって消したってとこかな。であればこのまま知らんぷりの方が良さそうだ。それでいいのかどうかは置いといて、ね。
「・・・・・」
「お父さん!? お父さんからメール来てたの!?」
「え? ああ、うん。言い忘れてたこととか、転勤の話とか、転勤の背景とか色々書いてた」
「勝負のことも?」
「うん。何か負けたら海外転勤、嫌なら国内転勤は確実みたいなこと書いてあったよ。勝ったら望みを何でも一つ叶えてくれるみたいなこと言ってたけど・・・」
「う・・・、ごめん。それ私にせいだ・・・」
「そうなの? でもほぼデメリットないし大丈夫だよ」
負けたら海外か国内転勤のどちらかをしてもらう・・・つまり負ければここには居られないということだ。恐らく獅子王さんは必ず異動という状況を作ることで僕を海外転勤に了承させるつもりなのだろう。
だが、そんな状況にはまずならない。
「そうなの?」
「だって国内転勤させる権限、獅子王さんにないし」
海外転勤の場合は獅子王さんいる支部となるので、そこの管理者の獅子王さんにはある程度人選の権限があるのかもしれない。しかし国内異動だと全くないのだ。あるとすれば部長だと思うので、部長に根回ししておけば回避可能だ。焦ることはない。
「・・・だったらいいけど・・・」
「まあ・・・ね。だから一応手も打っておいたけど」
ただ獅子王さんなのでどんな手を使ってくるか分からないし安心はできない。だから獅子王さんのメールを部長にそのまま転送して助けてくださいと巻き込んでおいた。あの部長は獅子王さんと仲良いので、獅子王さんの無茶にある程度対応してくれる筈。・・・筈!!
「でもお父さんと仲良いのよね? それお父さんに言いくるめられて終わるだけじゃない?」
「・・・・・」
ありえる。終わった・・・。今のうちに転勤準備始めるか。
「さらば、僕の職場よ・・・」
次回更新は3日後の予定です。