581. 家族会議③
告白?? 私が? 竹君に?
・・・・・・・・・いや! まだ無理!!
「そ、それはそうと! じゃああの勝負は何なの!? いきなり決めちゃって困ってるんだけど!」
『話逸らしたな・・・』
『逸らしたわね。もっと自信持てばいいのに・・・』
「いいじゃない別に! ほっといてよ!」
『あらら、怒っちゃった』
『まぁいい。勝負したい理由だがな、これは・・・単純にあいつの根性を知りたいからだ』
根性? そんなもの、竹君には十分すぎるほどあるわよ! 多分・・・。
『嘘ね。ただ戦いたいだけでしょう? あなた』
『ち、違うぞ! も、もしもの場合は大事な娘をやるのだ。そう、そうだ、頼りない奴だったら困るからな!』
『まぁ、そう言う事にしておきましょう。頼りない人だとのは私も不安になるから』
やっぱり戦いたいだけだった。予想通りだ。いつもそう、すぐにバトりたがる。娘として恥ずかしいわ。
ほんと迷惑・・・
『あ、優美! 今迷惑だと思ったな!?』
「当たり前でしょ! お父さんのわがままで竹君困らせないでよ! さっき人にわがままどうとか言ってた癖に、自分は好き放題やっておかしいでしょ!」
『おかしくない! メリットもある!』
「メリット?」
『そ、そうだ! 竹君が勝てばお父さんに出来ることは何でも一つ叶えてやる。どうだ?』
「私に「どうだ?」と聞かれても・・・。それ、竹君に聞くべきでしょ?」
どうも今思いつきで話している気がしてならない。しかしお父さんが出来ることは結構多そうだ。竹君的には悪くない話だろう。
『それにもう一つ約束しよう』
「何を?」
『竹君がお父さんに勝てば・・・、お前と竹君の結婚は全肯定、全面協力する!!』
「!!!?」
思わず立ってしまった。
正直今後のことを考える際、1番邪魔になるのはお父さんだと思っていたからだ。だが全肯定してくれるのであれば障害が全部消えたのと同じ。
『あら? そんなこと言っていいの?』
『構わん! どうせお前は優美側何だろう? であればどのみち俺の意見などお前に一蹴されて終わりだ』
徐々にトーンダウンするお父さん。
言われてみれば確かに。お父さんがお母さんに勝ったところは見たことない。フィジカルでは勝っているだろうが、上下関係で完全に負けている。
そう言えば昔お母さんが言っていた、「家事を請負、親族をより多く味方につけた側が夫婦間における全ての主導権を握るのよ!」と。まぁそんなことなくてもお母さんはお父さんを尻に敷いていただろうが。
『お義母さん! その旦那のコントロール術を今度私にも教えてください!』
『のどかちゃんは今のままでも出来てるけど・・・、知りたいなら教えるわ!』
『ありがとうございます!』
・・・少し兄さんが不憫に感じてしまった。おとと、それはどうでもいいから置いといて、
「お父さん。その言葉、後で撤回しないでよね!」
と言ってもこの会議は録音しているので、言質は確実に取れているが。
『しない! どうせ俺が負けることはないからな! たとえ勝負までの2週間必死に特訓したとしても、そんな短時間の特訓でできることなど知れている』
「・・・・・」
確かに短期間の特訓で竹君がお父さんに勝てる気はしない。けど負けても転勤しない可能性があるようだし、少し気が楽ーー
『あなた、その竹君が勝った時はそうするとして、負けた時はどうするの? 当初だと転勤させるって話だけど、行く行かないの意思を尊重するのよね?』
『ん? ああ、そうだな。じゃあ国内転勤でもさせるか。こっちは特別な理由がない限り、本人の意向無視出来るからな』
にはならなかった。
「ちょっと!? 何!? 結局私と引き離すのが目的だったの!?」
『そうだ。お前が暴走する前に引き離す。聞いた話じゃまだ独占欲が溢れてないようだからな』
「!?」
どうやらお父さんは私が竹君に対しての束縛が強くなることを警戒しているらしい。
だがそんなことはない。何故ならされてた側だった私は、それがいかに相手を不快にするか知っているからだ。知っているからこそ、そうならないように普段から完璧に押さえている。
「そんなーー」
『? お義父さん、その独占欲が溢れるとどうなるのですか?』
『誠が優美にしていることを、優美が竹君にすることになる』
『あー・・・、あれですかぁ。でもそれ、もう普通に出てますけど?』
「え?」
『何・・・だと!?』
『それよりあなた、出勤時間遅れてませんか? 後ろの時計・・・8時回ってますけど』
『何だとぉー!?』
父の絶叫と共に家族会議は嫌な疑問だけを残して強制終了した。
次回更新は3日後の予定です