569. 参観されてみた②
「撒いたか!?」
「ダメだ!! 追ってきた!」
転移は成功。予定通り獅子王さんから離れることはできた。一瞬だけ。
「なぜ逃げる! これでは参観にならんではないか!」
「何でどのオアシスも転移できるようにしてんだ!? やり込みすぎだろ!!」
予想外だったのは獅子王さんが同じ場所に転移してくることだ。まさか僕らが転移できる場所と同じ場所に転移できると思ってなかった。まぁ一度だけなら偶然で済ませられたが、こうも僕らの飛べるところ全部に飛んでくるとは思ってなかった。
「クソっ! ここのオアシスもダメか! こりゃ別々に逃げる方がいいな!」
「賛成!」
「賛成だけど・・・、誰の位置を把握して追ってくるの!?」
「んなもんポンタに決まってるだろ! フレンド合流してんだからよ! はよフレンド解除しろ!」
「そうか! しまったそれでか!」
慌ててフレンドを解除する。
しかしそのせいで遅れた。その間に獅子王さんに捕まる。助けを求めようとするも、目の前で2人は消えた。
「しまった! 囮にされた!!」
「待てい。ポンタ君、話が違うだろっ! 参観はどうした!?」
「あんたが潰したよっ! 気付かれたらこうなるって分かるでしょ!」
「知るかっ!」
『霧化』で逃げ、転移する。とは言え場所を選ぶ余裕はない。すぐ近くの港町近くのオアシスへと転移する。逃げれたとはいえ油断は出来ない。すぐさまある方向に向かって飛ぶ。
「逃さんぞ!」
「何でバレんの!?」
「教えてやろう。目の前の相手がどこに転移したかは一瞬だけレーダーに映るのさ。まぁゲームのプログラムの関係でだろうな。それが分かっていれば追い付くのは容易い」
言われて知る。どうやら視認してレーダーに映ったプレイヤーが転移した際、レーダーから消える一瞬、位置が転移先に動くようだ。しかし時間的には獅子王さんのいう通り一瞬。その一瞬で転移先をきっちり判断してくるのは至難の業だ。獅子王さんはそれを意図も容易く行ってくる。
だがそれよりも、
「何でそんなこと知ってるんです!? というか転移先のことといい、何でそんなにゲームしてるんですか!? そんなん時間ないでしょ!?」
「海外ではな、仕事以外ですることなんてこれくらいしかないんだよ!!」
「もっとあるでしょ!?」
「ない!!!」
断言された。いや流石にあるだろ。少なくとも観光とか、その国の食べ物食べ歩きとかさ。・・・いやでも毎日行くわけじゃないし、お金の関係もある。何年も滞在すればそうなるのだろうか?
「疑問に思うなら滞在してみるか? 席はあるぞ?」
「嫌です!」
本当に行かされそうな恐怖を感じ、『霧散』して一気に上空へと逃げた。獅子王さんは「ほう、転移スキルか」と驚きつつも、すぐさま『飛翔脚』で追ってくる。
「『飛翔脚』嫌い!」
「だろうな。だかこのスキルがないとこのゲームはお前のように飛ぶキャラの独壇場になるから諦めろ」
「ならこうだ!」
「ほう? 下か?」
「!?」
転移先に出た瞬間目が合う。完全に移動先がバレている。これもさっきのレーダー云々が原因か?
転移先がバレるとか弱体化したようなもんだが、今はそこを気にしている余裕はない。
逃げる為、すぐさま海竜へと変化し海へと飛び込んだ。空だと追いつかれるかもしれないと予測して、もしもの時は海中へと逃げれるように海へと逃げていたのだ。着水と同時に沈んでいき、すぐさま移動する向きを変える。
「よし、海中をこのまま逃げれば、流石にーー」
「無駄だっ! 『遊泳脚』」
振り向くと、まるで魚人のようにスムーズな泳ぎで追ってくる獅子王の姿が・・・。
流石に諦めた。
次回更新は3日後の予定です。