568.参観されてみた①
「それで・・・、これが奥の手か?」
ジト目でなまけものが僕に詰め寄る。「違う」と首を振った。
「奥の手としてカイザーさん呼んだんだ」
「それ、前の話を聞く限り悪手じゃないのか?」
「カオスになった」
いきなり始まる獅子王さんの説教、カイザーさんの反発、その間に逃げようとした僕はお二人に捕まり質問攻めにされる。
「で、そこから逃げるために打った手がこちら。獅子王さんのゲーム参観です!」
大袈裟に紹介する。紹介する前にバレてるけど知らん。
「よろしく諸君! ユウの父の獅子王だ!!」
「帰ってよ!!」
反射的にユウさんの鋭いパンチが入るが、獅子王さんは横目で見て簡単に止める。やはりユウさんとカイザーさんの父は伊達じゃない。身体スペックは2人と同等以上のようだ。
「何でいるの? お母さんに言うわよ!」
「言っても無駄だぞ。今回はちゃんと許可とった。ついでに言うとこの様子は録画して母さんにも見せるぞ!」
「やめてよ!」
なんて恐ろしい。最早存在するだけでユウさんの精神的ダメージが蓄積されている。まぁ僕が原因な・・・あ、ユウさんと目があった。
「ポンタ! 何で呼んだのよ!?」
「ごめん! まさかこうなるとは思ってなかったんだ!」
ゲーム参観を提案したのは事実だ。しかしあくまで気付かれないように遠くから見ること。
であれば普段の様子が観れると言ったのだが・・・、「そんな遠くからでは意味ないだろう!」と当初の打ち合わせを無視して近距離まで寄ってきたのだ。いやいや、認識されたら一緒に遊んでいるのと同じじゃん!
「何を言っている。俺はあくまで空気、いつも通りに遊ぶがいい」
「「「できるか!!」」」
存在感があり過ぎる。空気というのなら気配とその威圧感をギリギリまで消してほしい。最早僕らが何かしないか監視する監視員並みの存在感だ。
「なら俺には話しかけるな。そうすれば自ずとお前たちの意識から存在が消える」
「「「・・・・・」」」
腕組み仁王立ちで言われてもなぁ・・・。
とはいえ帰れと言って聞くような人ではないのは分かりきっているので諦める。
「はぁ・・・、そういえば、ココアは?」
「・・・今日は予定があるから来ないって連絡来てたわ」
「さては察して逃げたな?」
「言ってないんだけどねぇ・・・」
危機センサーが反応でもしたのだろうか? 相変わらず勘がいい。少し分けてくれないかなぁ・・・。
「んで、あの窒素どうするよ」
「窒素て。確かに空気の比率では存在感強いけど・・・」
「ねぇ。あっちに向かって攻撃しない? 試し撃ち」
「いやあっち窒素居るから」
「空気じゃない。ちょうどデカいスキル撃ちたい気分なの」
ユウさんは倒す気のようだ。やはり窒素は邪魔らしい。
「勝負か!? 俺は全然構わないぞ!!」
「空気が喋らないでよ!」
ほんとそれ。自分から存在をアピールしないでほしい。これじゃいつまで経っても意識から消えてくれない。
僕は大きくため息をつき、チャットを送った。
ポンタ :まぁ簡単に撒ける方法ならあるけど
ユウ :ほんと!? すぐにやるわよ。どうするの?
なまけもの :転移するんだろ? どこにする?
ユウ :なるほどね。当然ここから1番遠いところよ!
なまけもの :ならここか。じゃあ現地で合流するぞ
ポンタ :うい
ユウ :了解よ
「ん? 急に黙ってどうしーー」
怪訝な顔して寄ってきた獅子王さんの目の前で、僕らは転移した。
次回更新は3日後の予定です