564. ユウさんの父と会ってみた②
僕がユウさんの男? 何を言っているんだこの人は・・・、と思いつつユウさんの方をチラッと見ると、ユウさんは右手を顔に当て天を仰いでいた。
ユウさんのお父さんに会う前に、ユウさんから「セーフ案件か、アウト案件のどちらかだから」と言われたが、あの仕草を見るにアウト案件だったらしい。
その時は「問答無用で殴っていい」とも言われたが流石に無理だ。カイザーさんなら遠慮なくいけるのに。
確かによく一緒にいることは事実だが、そういうのはユウさんに聞くと1発で分かるんじゃ・・・。
「残念だが、教えてくれなかったのでな」
「言うわけないでしょ! お父さんなんかに!」
「・・・・・」
でしょうね。
僕だって親に「好きな人できた! 彼女出来た!」という気はない。言うとしても時期が来てからだと思っている。
しかし獅子王さんは今の「お父さんなんかに」の言葉でかなりの精神的ダメージを受けたようだ。微動だにしてはいないが、威圧感が消え、小刻みに震えている。しかし気合いですぐに元に戻った。
まぁ僕は隠す理由もないのでちゃんと否定しておこう。「そうです」と言ってみたいが、父親にとって娘の彼氏は天敵だから消される気がするし。
「本当か?」
「はい。そういう関係には全くなってないですね」
否定すると獅子王さんが「え?」とキョトンとした顔になった。てっきり安堵するのかと思ったがどこか納得できない様子で、
「2人で一緒に買い物に行っていると聞いているが?」
「そうですけど・・・、あれは安い店がちょっと遠いところにあるだけですので」
ついでにちょっと喫茶店などで話して帰ることもあるが・・・、別に言うほどではない。
しかし獅子王さんは納得せず、謎が深まったと言わんばかりに、頭にクエスチョンマークが出した。
「互いに弁当を作ってると聞いたが?」
「一度に2人分作った方が、手間と諸々の費用が減るので・・・。あと分担すると楽じゃないですか」
頭のクエスチョンマークが増える。
「定期的に家・・・寮の部屋に招いていると聞いているが?」
「ユウさん料理上手なので料理教わってます」
さらに増えた。
「仕事中もちょくちょくチャットなどで話をしているようだが?」
「次の休日の予定や何食べたいかなどの話をちょっと・・・。あ、ちゃんと休憩中ですよ」
頭に(略)
「ゲーム内ではよく密着してイチャついているとのことだが?」
「してません。僕は攻撃面で弱いので、ユウさんに乗ってもらってフォローして貰ってます」
実際はただ乗られているだけなのだが、流石に乗り物扱いされているとは言えばユウさんのイメージが悪くなるので言えない。これに関してはこう答えておこう。
一通り聞いた獅子王さんだったが、クエスチョンマークが消えることはなかった。むしろクエスチョンマークの雲ができている。
そこまで聞くと、獅子王さんは一度吹き飛ばしたカイザーさんを見た。今ので分かった、情報提供者はカイザーさんだな。毎度毎度、面倒事持ってくる・・・。
ユウさんをチラッと見ると、ユウさんもこちらをチラッと見た。頷いてお願いすると、頷き返してカイザーさんの方へと歩き出す。よし、後はユウさんに任せておけばいい。もうカイザーさんが朝を迎えることはないだろう。
「そこまでして何故付き合っていないのだ?」
「そうですか? うーん・・・互いに恋愛感情がないからじゃないですかね?」
「・・・・・」
直後ユウさんの大剣が僕へと突き刺さった。
・・・嘘言ったからかな?
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