563.ユウさんの父と会ってみた①
「父の獅子王だ!」
「・・・えと、ポンタです」
目の前にいるのは2足歩行のライオン。ものすごいガタイのいい体と、強面、眼光がかなりの威圧感を与えてくる。僕はすでに傷付いた子犬のようだった。
だが相手の姿は所詮ゲームでの姿。多少厳つい見た目だろうと、ゲーム内である以上萎縮することはない。
萎縮している原因は、この人がリアル上司の上司、それも超お偉いさんで、現実でも強面ムキムキ、そしてユウさんの父だからである。肩書き、身体能力、関係性、すべてにおいて分が悪かった。
「まぁそう縮こまらないでくれ。これだと私が悪いみたいじゃないか?」
「いや、親父が100・・・いや1000%悪い」
「黙れ。減給するぞ!」
「何でだ!? パワハラだぞ!」
「違う。私は父親としてお前がバカやらないように渡すお小遣いを減らすだけだ。減らした分はのどかさんへとちゃんと渡す」
「やめてよ! ただでさえお小遣い少ないのに!!」
帰っていいですかね? 帰らせてもらえないですかね? 居なくてもいいと思うので帰りますね?
そろりそろりと後ずさりするとカイザーさんに捕まった。
「ポンタぁ!! お前からもこのパワハラ親父に言ってやってくれよぉ!」
「いえ、親子の話し合いに口出すわけには・・・」
「そのとおりだ。やはり一般常識はあるようだな。ゆ・・・、おっとここではユウだったか、が選ぶだけあるな。」
かかわりたくないだけですが!!?
しかし冗談だと思いたい。先輩よりめんどくさいぞこの人。というか先輩が終始圧倒されている。やはり先輩といえど親には勝てないのか?
「ポンタァ!!」
「いい機会なのでもっとコッテリ絞られてください」
「ユウゥ!!」
「そしてそのまま永遠に消えてちょうだい。ね? ポンタ?」
「いや、そこまでは・・・」
まぁ当分は消えていて欲しいけど。
「なるほど、2人はコイツの海外僻地への転勤を希望するか・・・。そうだなぁ・・・」
「そうだなぁ・・・じゃねぇよ! 子供産まれて半年もしないうちに転勤とか常識ねぇのかよ!?」
僕もそう思うが先輩には言われたくないなぁ。獅子王さんもそう思ったのか、「お前が常識語るんじゃねぇ!」パンチを繰り出している。あっさり吹き飛ぶカイザーさん。
「・・・・・、僕は何を見せられているんだろうか?」
「ごめん。バカな家族で・・・」
ユウさんもウンザリした様子。しかし獅子王さんの動きにはところどころユウさんと似ている。特に攻撃に移る躊躇いのなさとかね。
「変なこと考えてない?」
「いやいや、血のつながりを感じただけだよ。それより・・・」
そろそろずっと思ってた疑問を消しておこう。
手についたカイザーさんの羽根をはたき落としながらこっちにくる獅子王さんに問いかける。
「何で僕ここにいるのですか?」
「決まってるだろう? お前がユウの男だからだ!」
ニカっと笑った獅子王さんだが、目は全くと言っていいほど笑ってなかった。
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