558.ユウさんと戦ってみた①
ユウさんが軽い原因を少し検証してみた。
結論を言うと、ユウさんが装備した時点で剣などの重量が消える。
ユウさんの種族が霊関係から、ポルターガイスト的な現象で浮かしているのではないかというのが僕らの推測だ。
これらの装備はユウさんから離れると、本来の重量を取り戻して一気に重くなる。試しにユウさんの剣を、ユウさんがが持ったままと、離した状態で持ち比べてみたら、持っている状態だと指一本でも動かせるレベルで軽いが、離した状態だと両手で何とか持ちあがるくらいに重くなる。なぜこのような仕様なのか知らないが、都合が悪いわけじゃないので気にしないことにした。
「じゃああとはスキルの検証なんだけど・・・」
「俺パス」
「僕も」
「何でよ!?」
「「死にたくない」」
検証という名の戦闘はやりたくない。ユウさんが入る検証は実戦訓練みたいなものだ。しかし進化前ですら勝てない僕らが、進化後のユウさんに勝てるわけがない。徹底的にボコられて終わりだ。
「いや待てよ? ポンタ、いけるかもしれんぞ」
「どうせ遠くからネチネチ攻撃すればいいとか言いたいんだろ?」
「おう! この近接バカゴリラなら絶対いける!」
「聞こえてるんだけど?」
「確かに特化してるけど・・・絶対無理だって。まぁどのみち弱点ではあるから、試しておくのはいいのかもしれないけど」
弱点対策はしておくに越したことはない。そう思って2対1で検証を始める。
今更だが、2対1で行うことに誰一人疑問を持たなかった。
「ポンタは上から。とりあえず距離取って撃ちまくるぞ」
「了解」
『霧化』をONにし、なまけものと作戦会議と呼べるかどうかも分からない簡単な打ち合わせを終わらせる。その間ユウさんは腕組の仁王立ちで待機。見た目の禍々しさも相まってもうボスみたいだ。
「終わったかしら? なら始めましょ」
「はい・・・」
ユウさんが剣を抜いて両手で構え、集中しだした。
「え? これ検証だよな? 殺る気満々な気がするんだが・・・」
「ええ。チャンスだからなまけにはこの際徹底的に死んでもらうわ」
「何でだよ!?」
「? 僕は?」
「・・・・・」
「僕は!?」
どうなるんだろうか・・・。まぁ考えるだけ無駄だ、どうせすぐにわかる。
だがユウさんの狙いはなまけものらしい。であれば一旦なまけものに意識が向いている間に裏取って挟み撃ちにでもーー
「行くわよ!!」
「え!? こっち!!?」
開始と同時にユウさんが僕へと向かって直進してきた。進化してスピードが上がったこともあり、攻撃する前に距離を詰められる。しかしヨセフの速度である程度目が慣れていたので、慌てずに『霧散』を使って斬られる前に上へと転移する。
ユウさんはそのまま通り過ぎ、少し先で止まった。どうやら自身が思ったよりもスピードが速かったようで、少しその場で跳躍しつつ、動きを確かめている。本来なら攻撃チャンスだが、検証なので攻撃せずに待つ。
「チャンス!! 今こそ積年の恨みを晴らすとき!!!」
しかしそう思っていたのは僕だけだったようだ。
なまけものはチャンスとばかりに最大威力で水魔法を放つ。しかも逃げ場のないほどのかなり広範囲にだ。普段はSGの消費量からほぼ使わないレベルのものを初手で放ちやがった。
「『飛翔脚』」
しかしユウさんは動じず、『飛翔脚』を使って飛び越えようとする。しかしそれは僕の予測通りだ。
「『ミストブレス』」
「読んでるわ」
ユウさんの移動先を予測して放つも、読みはユウさんの方が上だ。僕が放ったと同時に軌道を変えてそのまま僕へと突っ込んでくる。だが問題はない、『霧散』を使えばーー
「そう来ると思ってたぜ。リア充共め、まとめて食らえ!!」
「「!?」」
ユウさんとの距離が近くなったタイミングで、なまけものが僕諸共水魔法が僕らを飲み込んだ。
次回更新は3日後の予定です。