551.白炎ヨセフと戦ってみた⑭
『ライフオアリインフォース』、どうやらヨセフは最後の賭けに出たらしい。なまけものが言うには、HPをバフに変換している今、ヨセフは攻撃を受け付けないらしいので待機するしかないとのことだ。何でなまけものがそんなスキルを知っているのかというと、このスキルはどんな敵も一撃必殺プレイをするプレイヤーが使っているスキルで、たまたま知っていたらしい。
「ただヨセフが使っているスキルが、本当に『ライフオアリインフォース』か知らんがな。似た別技かもしれん」
「まぁそうだね」
スキル名言ってないからね。ただその場合ヨセフ専用技の可能性が高いので、絶対理不尽な効果を持っているだろう。注意しなければ。
「ねぇ? あれ、HPの減る量は途中で止められるのかしら?」
「無理。使えば必ずHP1まで下がる。強化倍率は減ったHPの値で決まるらしいけど、HPの数値が見えないから数値まではよく分からん」
「私はなまけが何言っているのかよく分からないわ。でも残念。減り量を調整できるのならSG低い私でも使いようがあるかと思ったのに・・・」
「やめとけ。あれは一部の人外プレイヤーが使うスキルだ。俺ら一般プレイヤーは持つだけ無駄だ」
「そんなものなのね・・・。あ、そろそろ終わりそう」
ヨセフのHPがほぼ0となった状態で、ヨセフは集中を解いてゆっくりと構える。
強化された分、消えかかっていた白炎も大きくなり、さっきの『カースフィールド』を受ける前と同じくらいまで戻っている。それを見たユウさんは、嬉々として剣を構えた。
「1人でやっていいのかしら?」
「お好きにどうぞ」
恐らく僕となまけものでは対応しきれないだろうし、そもそもダメと言っても聞かないだろう。なまけものも分かっているようで、「勝手にしろ」と手で払うジェスチャーをしている。
ユウさんはそれを見て、「じゃあ遠慮なく!」とヨセフへと突撃していった。直後、ヨセフとぶつかり、違うゲームのごとき剣戟をして楽しみ始める。
「遠慮なんかしたことあんのか?」
「最初はあった気がする」
「そうだったか? まぁ俺らもあんまりしてねぇけどな。・・・それよりさ」
「ん?」
急に神妙な顔でなまけものが聞いてくる。何やら懸念事項があるようだ。
「ココアどこ行った?」
「・・・・・」
見渡しても居ない。そういえばユウさんが解放されてから見てない。てっきりなまけものが把握していると思っていたから気にしていなかった。
「その辺に居るんじゃないかな?」
「まぁそうなんだろうがよ。ただこういう時、あいつは絶対要らないことをする」
「そうなの? !?」
聞いた時に気付いた。同時になまけものの言いたいことを理解する。
「そうなんだよっ! あいつは何するか分かんねぇからある程度把握しーー」
「なまけ、あれ・・・」
「ああ? なんーー」
僕はヨセフを、いやヨセフの後ろを指差した。なまけものはそちらを見た瞬間固まる。
そこには触手を伸ばしはじめているココアが、またしてもヨセフを転ばそうと画策している。どうやら引っ掛けることに完全に味を占めたようで、恐らくニヤニヤしながらこかすタイミングを見計らっているのだろう。こちらが見ていることに気付くと、にゅっと新たな触手が出て来て、「任せて」と言いたげにサムズアップした。
「あのバカ・・・。死ぬ気か? 流石に3度目はむりだろ!」
「ヨセフの事だから成功しそうな気もするけど?」
「したらしたでユウが騒ぐだろ! 成功してもダメなんだよ!」
「あー・・・」
なまけものが言いたいことはよく分かる。ユウさんはすごい嬉々として戦っているので、仮にココアが倒してしまったらすごく文句言いそう。最悪もう一度戦いに行きたいと言い出しかねない。
「だろ? 失敗してあいつが死んでも後味悪いから、やったら最後、俺らにはデメリットしかねぇ」
「・・・止めようか」
「そうしよう」
しかし僕らの判断は遅かった。
ココアが行動を起こしてしまったのだ。
次回更新は3日後の予定です。