550.白炎ヨセフと戦ってみた⑬
「・・・で? 何地面に転がってんだお前?」
「・・・遅くなったけど、スキルの攻撃速度はそのまんまだった」
「だろうな」
動きこそ遅くなったものの、普通の剣戟に織り込まれてくるスキル攻撃速度は変わらず回避の失敗。威力は下がっていたため死にはしなかったが戦闘する気はあっさりと消えた。
現在は代わりにユウさんが参加し、圧倒してヨセフを地面に転がしている。しかしヨセフのHPはまだ2割ほどある。まだ油断はできない。
「勝ったな」
「フラグ立てるのやめろ」
『くっ・・・、このままではいかん!』
「あっ・・・」
「ほら見ろ」
なまけものが立てたフラグはすぐに回収された。ヨセフは立ち上がってユウさんから距離を取ると、剣を両手に持ち、何やら集中し始めた。白炎に力を溜めているのか、消えかかっていた纏っている白炎が徐々に勢いを増し始める。
ユウさんは次の行動が予測できないからか、その状況に様子見をしている。しかし僕となまけものは違う。どういう状態であれ、動かない敵はただの的だ。
「『ミストブレス』!!」
「『サンダーxサンダーxサンダー』ぁ!!」
当然、チャンスとばかりに攻撃を撃ちこむ。ヨセフはHPこそ減らすも集中をやめない。この間に終わらそうと再度攻撃を加えようとするも、邪魔が入る。
ユウさんが射線上に割り込んできたのだ。
「ユウどけっ! 邪魔だ!」
「ちょっと!? 何攻撃してるの!!? 変身やパワーアップ中は待つのがルールじゃないの!?」
「はぁ? 誰の入れ知恵か知らんが、そんなルールは俺らにねぇ!!」
「ごめん。僕の入れ知恵だ」
「お前かよ!!?」
前に「戦隊シリーズなどの長い返信シーンで敵が攻撃してこないのか」を議論した際にそのようなことを言った覚えがある。なぜそんな議論をしたのか、結論はどうだったか、は覚えてない。
「まぁんなことどうでもいい。ユウ! 今チャンスなんだからさっさと終わらせたいんだよ!」
「でもちょっと待ったら強いヨセフと戦えるじゃない! 今のままじゃ弱すぎて倒した気にならないわ!」
「サ〇ヤ人かよ・・・。おいポンタ、あいつまだ操られてるのか?」
「違う。多分さっきのフルパワーヨセフに勝ててないからやりたいだけ」
「負けず嫌いめ・・・、じゃあ説得よろしく」
「聞くと思う?」
「・・・・・。無理だな。まぁいい、今回はユウの要望を飲もうじゃないか」
「え?」
なまけものの判断にびっくりする。この状況でユウさんの要望を聞くとは思えなかったからだ。普通に左右に分かれ、ユウさんを避けて攻撃すると思っていた。
この答えにはユウさんも動揺する。
「!? ・・・何が狙いよ」
「何も? 仲間の要望を聞いただけだろ?」
「頭打ったのか? ちょっと気持ち悪いぞ」
「おかしいな。俺はこのパーティ唯一の優しさ持ちだぞ?」
「「頭打ったな(わね)」」
「打ってねぇわ! チッ! 折角バーサーカーのやりたいようにやらせてやろうと思ったのに酷い仕打ちだぜ」
「誰がバーサーカーよ!?」
「なまけ、それよかヨセフを放置していいのか?」
「さぁ知らん。一か八かだな。上手くいけば一瞬で倒せる。強化を見誤れば負けだな」
「?」
言いたいことがイマイチよく分からない。するとなまけものはヨセフ・・・いやヨセフのHPを指差した。ヨセフのHPは何もしていないのにも関わらず何故か減り続けている。
「『ライフオアリインフォース』。見るのは初めてだが、HPを1にして消費したHP分ステータスを強化するロマンスキルだ」
「え? それって・・・」
「おうよ。つまり今のヨセフは弱攻撃でも即死するが、強さは未知数。俺らの対処できる範囲以上に強くなっていれば負け、そうでなければ勝ちだ」
なまけものはニヤッと笑ってそう言った。
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