548.白炎ヨセフと戦ってみた⑪
なまけ視点です。
「ぐわぁあああ!」
ユウに弾き飛ばされ地面を転がる。
視界の端では『凍死』させようとするココアも同様に弾き飛ばされている。何とかココアを近づけさせたいが、ユウの近接特化ステータスの前にはかなり厳しい。
というか身体強化してるのにあっさりパワー負けするって・・・
「・・・あのゴリラ、パワー強すぎるんだよ!」
ユウ :よし、なまけからやるわ!
「やべっ! 口に出たかっ!?」
ユウは一気に詰め寄ってくると、自前の剣で連撃してくる。俺は『晶壁』で防いだり軌道を逸らすようにして避けるが、それでもじり貧だ。攻勢に変えることができない。
いや、攻撃はできるのだが、魔法を使えばユウは退場してしまう。なのでよわよわパンチやキックに頼るしかない。
「このやろっ!」
ユウの攻撃直後に渾身の右ストレートを繰り出すも。体を少し傾けるだけで避けられてしまう。完全に見切られている。しかし避けられたことを気にしている余裕はない。すぐに反撃が返ってくる。
「クソッ、『飛翔脚』」
距離を取るために跳躍。しかしユウも『飛翔脚』で追ってくる。
ダメだ逃げられない。ステータスで負けているのであっさり追いつかれ、斬られた。咄嗟に『晶壁』で軌道を逸らしたものの避けきれなかったのだ。
ユウ :やったぁ!
「やったぁ! じゃねぇ!! まさかと思うがお前が操作してんのか?」
ユウ :してないわよ。でもちょっとスッキリ
「助けたら覚えとけよ!」
着地し、視界に入ったポンタの様子を見る。あっちもヨセフの攻撃に苦戦しているようだ。『霧化』でダメージは無いようだが、どうしようもない状態を見るにやられるのは時間の問題だろう。
「チッ! こうも近接特化だと、遠距離特化と凍結特化と乗り物特化ではキツイな。せめてスピードとパワーだけでもステータス下がってくれれば可能性はあるんだが・・・」
「なら『カースフィールド』だよ~」
「生きてたかココア。だが『カースフィールド』はSGの割に範囲と効果が合わん。そもそも展開した範囲にあいつらが入っていてくれなきゃ意味ないぞ」
「そうなの? ならこうだよ!」
「? あっ! ちょっおまっ!!」
止める前に急に視界が暗くなった。『凍死』させられたらしい。
ココアの意図は分かっている。どうせ俺を囮兼盾にして近寄ってきたユウに『カースフィールド』を充てるつもりだろう。だが、展開直後抜けられたら意味ないし、そもそも警戒して寄ってこなきゃどうする気なんだ? ああクソッ! 状況が(物理的に)見えん!
何もできない状態だが、時間はどんどん過ぎている。唯一生きている聴力に集中すると、どうやらユウは俺を攻撃しているようだ。そして、
「『カースフィールド』!」
ココアが『カースフィールド』を展開しているのも分かった。タイミングは悪くない、確実に範囲内に入っただろう。しかしユウは即座に離れるだろうからやはり無駄撃--
「!?」
突然視力が復活した。
同時に体も動かせるようになり、慌ててバランスを取ろうとして前のめりに倒れてしまった。
目の前に居たユウを巻き添えにして。
「え?」
「きゃあ!?」
「っ!!?」
直後腹に激痛が走り、俺は後方へと吹き飛ばされてしまう。一緒にHPも瀕死レベルまで消し飛んだ。
状況が理解できんが、ギリ視界端に見えたユウが拳を突き上げているところから、恐らく殴り飛ばされたらしい。
ユウは俺を睨みつけると、
「勝手に抱き着いてこないでよ!!」
「ち、違う・・・」
俺は悪くない! と言いたかったが、腹が痛くて言えなかった。
・・・ん? 何であいつしゃべってるんだ?
次回更新は3日後の予定です。