542. 白炎ヨセフと戦ってみた⑤
「あのばかっ!」
突撃していったココアを追う。しかしなぜかあっちの方がスピードが速く追いつけない。
「のわぁ!?」
何でだ!? と思うと同時に滑ってこけた。その際に気付く。床が凍っていることに。
凍った床はココアへと続いているので、どうやらあいつは床を凍らせ、滑って移動しているらしい。
「なら俺もだ!」
勢いよく地面を蹴って凍っている地面の上に乗る。そのまま滑ってココアを追う。しかしココアはこの時点ですでにヨセフの近くへと移動し終わっていた。
ココアは触手のように体の一部を細く伸ばし始め、スルスルと地面を這うようにその触手をヨセフの足元へと伸ばしていく。一瞬何がしたいんだ? と思ったが、すぐに分かった。どうやら足を引っかけて転ばせる気だ。
ポンタもココアのやりたいことに気付いたのか、ヨセフがココアの方を向かないように位置を変えているが、
「いや無理だろ。Sランクだぞ」
そんな簡単に転ばせられるなら誰も苦労せずにSランクを倒せる。恐らくヨセフもとっくに気付いている筈だ。
だから恐らくやるだけ無駄だろうし、状況が悪化する未来しか見えない。そう判断し、急いでココアを止めようとする。
しかし、
「えいっ!」
「あっ!」
ココアを捕まえる寸前、やりやがった。ココアはヨセフの足が引っ掛けやすい位置にきたタイミングで触手を足に絡ませて引っ張った。しかし当然そんな簡単なヨセフが倒れるとは思えない。片足で踏ん張って耐えるだけだろーー
『おおっ!? なんっ!?』
「ええええっ!? きゃああ!」
そんな俺の目の前でビターンッ!!と音を立てて倒れるヨセフ。ついでに巻き込まれる形でユウも押し倒されていた。
だが俺はそんなことより、あっさり倒れたヨセフの姿に呆然とする。お前・・・Sランクだよな?
ココアは追撃のため、ヨセフに乗って『凍土』を発動。
「ちょお! 何っ!? 冷たっ!? 何なのっ!? ポンタぁ!!」
「バカココア! ユウが下敷きなんだ、一旦止めろ! 今ダメージ受けんだから!」
「ええっ!? そうなの!?」
「見えてたろっ!!」
どうやらココアは気付いていなかったらしい。『凍土』をすぐに切る。しかしヨセフが立ち上がるのを防ぐために『巨大化』で押さえ込む。
「いやだからユウが下敷きなんだって!」
「あ、そうだった!」
「大丈夫、今助けた! もう使っていいよ!」
「・・・死ぬかと思ったわ。精神的に・・・」
ユウはココアが『巨大化』する寸前にポンタが何とかヨセフの下から引き出していた。ユウは至近距離でヨセフを見たせいかげっそりしている。HPは・・・まだ大丈夫か。
「分かった! 『凍どわわわわっ!?」
ポンタの連絡を聞き、再度ココアは『凍土』を発動しようとする。しかしその直前、『巨大化』したココアの巨体が垂直に跳び上がる。ヨセフが力任せにココアを上に吹き飛ばしたのだ。そして落ちてくる前に立ち上がり、剣を天に掲げる。そのまま串刺しにする気らしい。
「させるかぁ! 『サンーー」
『『火炎』」
「うおおっ!」
剣を持たない左手から白炎の『火炎』が飛んでくる。
慌てて避け、再度『サンダー』を放とうとした時、目の前でココアが貫かれた。
次回更新は3日後の予定です