540.白炎ヨセフと戦ってみた③
「うわぁあああ!」
『何っ!?』
ヨセフの杖の先から放たれた白炎に包まれる。白炎は熱さを感じさせず、ダメージもなく、僕を燃やすことなくただ体内へと入っていた。
そして僕の体は動かなくなった。いや、動かせなくなった。
「ポンタ!」
動けず地面に落ちた僕にユウさんが駆け寄る。
ヨセフが杖を持ち出した瞬間、ユウさんの元へと『霧散』で移動し、ユウさんを射程範囲から投げ飛ばしたまではよかったが、OFFにしていた『霧化』が間に合わなかった。庇ってノーダメージでやり過ごし、ヨセフにドヤるつもりだったのに・・・。
「大丈夫!?」
「なんか体動かせない。・・・嫌な予感するから僕から離れて」
「でも!」
受けたスキル『傀儡化』。スキル名の通りなら、体を動かせなくするスキルではないだろう。偽物の僕を作って敵として出してくるような場所のボスだ。恐らく・・・
「! いいから早く!!」
「!? は、はい!」
シュボッと頭に白煙が灯り、意識していないのに尻尾の先が動き始めた。咄嗟に大声でユウさんに距離を取らす。すると体が勝手に動き出し、ヨセフの傍へと移動した。
「何やってんだポンタ!?」
「!? ・・・・・」
声が出ない。
大声を上げたことがヨセフの気に障ったのか、喋れないようにされたみたいだ。
ポンタ :コントロール乗っ取られた。声も出ないのでこっちで話す。
しかしチャットは問題なく使えるので意思疎通は大丈夫そう。しかしまさかこのゲームで体のコントロールを乗っ取られるとは・・・。自分の思いと違った動きするのですごい気持ち悪い。
『余計な邪魔が入ったが・・・まあよい、傀儡にするまでの時間が少し伸びただけだ。それにこいつはこいつで使い道もある』
まさか乗り物として使うじゃないだろうな!?
嫌だぞ、敵からもその手の認識されるの! あとお前重そうだから絶対乗ったら動けないぞ!!
しかしヨセフは僕に乗る予定は無いようで、僕を上へと移動させる。フィールド中央辺りに移動させると、なまけものたちの方へと顔を向けた。
ポンタ :多分ここから攻撃すると思うからよろしく。多分狙いはなまけかな
なまけもの :俺かよ! 攻撃し返し有りか?
ポンタ :なしで
直後『ミストブレス』がユウさんへと飛んでいく。しかし身構えていたなまけものが『晶壁』で防いだ。
「違うじゃねぇか!!」
ポンタ :すまん! あ、また攻撃するわ
怒鳴るなまけものに、『ミストブレス』が飛んでいった。
ーーーー
「ちぃい! 撃ち落としてぇ!」
「撃ったらその瞬間その首落とすわよ」
「何でだよ!?」
「ポンタは私の身代わりでああなったの。やるなら私に攻撃しなさい」
「お、いいのか?」
「いいわよ。その代わりその首飛んでも知らないわよ」
「結局落とす気じゃねぇか!」
ユウは少しイライラしているようだ。剣で負けたからってのもあるだろうが、単純にポンタを取られたのが腹立たしいのか? あいつ独占欲無駄に強いからな。
いや、身代わりになったポンタに罪悪感でもあるのか? だが乗っ取られた当の本人は、適当なチャット送って来やがるくらいのんびりしているんだから、そんなに気を使うことでもない気がするぞ。
「イチャつけないからからじゃない~?」
「ああ、そうかもーー」
首が急に熱いと感じる。気づくと首のすぐ横でユウの剣が寸止めされていた。すぐさまココアを自分の前に出す。
「こちらが茶化しの元凶でございますゆえ、私めにはどうかご慈悲を」
「ちょぉ!? 何してるの!?」
「慈悲はないわ」
「「え~!?」」
そんな俺らに、「遊ぶな」と言いたげな『ミストブレス』が直撃した。
いや遊んでないからな!
次回更新は3日後の予定です。