531.ヨセフと戦闘してみた⑤
『『鎮魂火』』
「あっ、くそ。また使いやがった」
言ってる傍から『鎮魂火』による白炎が目に見えて増えている。流石に白炎に集中しないと避けるのが厳しくなってきた。しかし目に見えて変わったのは白炎の降る量だけではなかった。
『『火炎』』
ヨセフの攻撃頻度も増えてきた。移動速度も上がっている。まるでスロースターターかのように一気に動きが変わった。
当然そんなことは知らずのんびりしていた僕らは焦る。『火炎』を避けつつ一旦ヨセフから距離を取った。視界の端でなまけものたちも慌てているのが見えるが、あっちはなまけものの『晶壁』を傘に見立ててあっさり対策している。
「ユウさん! なるべく避けるけど降ってくるやつ頼んでいい?」
「分かったわ!」
こっちには『晶壁』なんて便利なものはない。回復でごり押してきた僕は防御スキルなんて持っていない。当然、盾など不要、当たらなければどうってことないよねが根本的な考えのユウさんもない。
本来『霧化』があるので僕は要らないのだが、ユウさんが乗るこの状況だと使えない。まぁ『霧化』はSG消費もあまり無視できないので『晶壁』のような低コスト防御スキルは合っても困らないだろう。今後機会があれば手に入れよう。
「ポンタ! 頭邪魔!!」
「うおうっ!?」
そんなことを考えていると頭の上すれすれをユウさんの剣が通り過ぎる。どうやら頭の上に白炎が降ってきていたようで防御してもらったわけだが・・・、ぶっちゃけユウさんの攻撃でダメージ受ける現状だと今の一撃で下手したら死んでいたかもしれない。というか頼んでおいてなんだけど、いつユウさんの振り回す剣が僕に刺さるか気になって仕方ない。
「死ぬかと思った・・・」
「白炎、急に多くなったわね・・・。!? そうだわ。ポンタ、ちょっとココアの所に寄ってもらっていいかしら?」
「? いいけどなんで?」
「ちょっといいもの貰いに」
ユウさんに言われてココアの所に移動する。ココアはなまけものの背中に張り付く形でサポートに徹していた。
「まだなんもサポートしてくれてねぇけどな! というかどうかしたか?」
「ココアにちょっと作ってもらいたいのがあるのよ。いけそう?」
「軽いのでいいの? じゃあこれ~。強度は知らないから壊れたらまた来てね」
事前にユウさんがココアに連絡していたのだろう。到着するなりココアが『生成』で板を出す。いや取っ手があるな。扉か? 観音扉の片側だけのような形だ。サイズは大きく僕らが隠れられる程度。
「シンプルでいいじゃない」
「でしょ~? 一応鉄製をイメージしたよ」
「いいわね。じゃあ借りてくわ」
ユウさんはそれを頭の上に持つ。それで僕もピンときた。どうやら傘代わりに使うようだ。確かにこれならユウさんが剣を振り回さなくてすむ。僕の死ぬ確率もグッと減る気がする。
ユウさんは少し確認した後、問題ないと判断したのか「行って」と僕に伝える。
「これ本当に大丈夫?」
「受けてみないと何とも言えないけど武器振り回すよりいいでしょ?」
「でもコレ・・・、僕の頭や尻尾がカバーされてないんだけど」
僕が長いのか、ココアが出してくれた板が小さいのか・・・、カバー範囲から僕がはみ出ている。ユウさんを含む胴体部分は問題ないが、頭と尻尾先端はノーガードだ。
「その時は剣で弾くから大丈夫よ!」
「ええ~・・・」
「問題ないわ」と笑顔で言うユウさん。僕は死ぬ確率がグッと上がった気がした。
次回更新は3日後の予定です。