527.ヨセフと戦闘してみた①
ゴゴゴゴゴッ!
部屋全体を揺らし、石棺から大きな髑髏が立ち上がる。いや髑髏じゃない、ミイラだ。体中の水分が全て抜け、皮膚が骨に張り付いて髑髏のようにガリガリだが、ちゃんと皮膚がある。目などは腐ってなくなっているようだが、その顔は道中の煩い死霊使いにそっくりで、この時ようやく奴らもミイラだったと気付く。しかし死霊使いとは大きさも身に着けているものも違い、明らかに位の高い者だと一目で認識できた。
「・・・・・」
そしてユウさんが背中で固まったのも認識できた。トラウマが呼び起されたのか、横目で見ると涙目になっている。
いやいや、煩くない分こいつの方が大丈夫でーー
『ギェエエエエエエエ!!!!』
「「「「・・・・・」」」」
もっと煩かった。ついでに言うとその叫び声には衝撃派があるようで、周囲の装飾が吹き飛ばされ、距離のある僕らの所まで衝撃が襲ってくる。
「あ・・・」
衝撃に耐えている間に立ち上がったその巨大なミイラの姿に死霊使いの高速移動が頭をよぎる。死霊使いの上位互換だとすれば、あのホラーな高速移動も健在だろう。
「すまんポンタ。俺無理かもしれん」
「「私も!!」」
真っ先になまけものが弱音を吐き、ユウさんとココアがすぐに同調する。なんか声遠いなと思ったら、全員扉の所まで撤退してた。後衛の2人は分かるけど、ユウさんいつの間にそこまで移動したんだ?
いや、それはあとだ。
「いや、ちょっ!? これ1人は無理だって!!」
相手は巨大なのに、この部屋の高さはそれほど高くない。仮に僕が天井すれすれまで高度を上げても、相手が腕を上げると当たってしまうほど低いのだ。広さはそれなりにあるが、確実に攻撃が回避できるほどの距離があるかどうかといわれると微妙だ。
何が言いたいかというと・・・、相手の攻撃よけるの多分無理!
「がんばっ!!」
「応援じゃなくて魔法飛ばせ!! あっ」
相手の近くで大声上げていたのがいけなかった。振り向くとミイラと目が合う。いや相手に目玉ないけど。ただ顔の向きから完全に標的にされたと悟った。
直後、巨大なミイラは僕へと向かって動きだす。
「・・・え? 遅っそぉ!!?」
一瞬で間合いを詰められるかと思い『霧化』をONにしたのだが、予想に反して相手の動きはすごく遅い。歩幅が広い分、一歩で詰めてくる距離は大きいが、その遅さの所為か死霊使いよりも全然遅い。なんだろう、水の中を歩いているかのようなスローモーションだ。
とりあえずあのホラームーブはしないようなので、マーキングしつつ後ろに下がって一定の距離を保つ。
名前:白炎のヨセフ
職種:死霊王
ランク:S
「ん~・・・」
Sランク
スピードは断然こちらが上なので、一定の距離さえ取り続ければ楽に勝てるんじゃね?の考えを消す。逆に下手に近付いたら死ぬかもしれないという考えが一気に頭を支配する。
とりあえず試しに『ミストブレス』を付与無しで撃ってみた。
『ミストブレス』はヨセフに当たって「え? HP減った?」と疑いたくなるようなダメージを与える。言い方を変えよう。効いてない。
試しに毒や他の状態異常を試してみるが・・・、効果はなかった。
「あ、無理だわこれ」
遠い目で僕はつぶやいた。当然だ、だってダメージ入らないんだもん。
この場合、ダメージを与えられる弱点があるか、何かのタイミングのみダメージが入るか、事前に準備が必要か・・・、どれかだろう。事前準備がいるパターンでないことを祈りたい。
「ふっ、何してるんだ? ポンタよ」
「!? お前・・・」
「待たせたなっ!」
考え始めようとしたとき、なまけものが隣に立っていた。
次回更新は3日後の予定です。