526.扉の中に入ってみた
詫びのプレゼントでなまけものと多少の格闘をし、ユウさんに両成敗されて思い出す。
「あっ、そういえばこんなことしてる場合じゃなかった」
「あん? 何かあるのか?」
「道中あの2人を見たんだよね。追いつかれる前にクリアしておいた方がいいと思って」
僕は上空を飛んでいたので川を上る2人には気付かれなかったが、2人がこちらに向かっている。岩の扉の開け方までは教えているので、ムクマリの実さえ準備出来ていたらあっさりと追いつかれる。追いつかれると絶対面倒にしかならない。
「同感だ。さっきのやられ方だと、今度はユウも目の敵にしてきそうだしな」
「でも対して強くなかったわよ?」
「強さじゃねぇ。ああいう奴は粘着力高いんだよ。関わっても時間の無駄」
言い切るなぁ。
僕は彼らが本性を現した時に居なかったので分からないけど、話から勝つまで突っかかってくるタイプだと勝手に思って面倒認定している。あと負けたら物凄く煽って来そうな気がして嫌だし。
ユウさんは「それもそうね」と納得する。
「んじゃごたごたしたが・・・扉の先に行くぞ、野郎ども!」
話も終わったので、なまけものが先へと進むために豪華な扉を開け始めた。どうやらここの扉は手動らしく、なまけものがゆっくりと扉を開けていく。まだこっちは行く準備出来てないんだが?
まぁそれはいい。それはいいが・・・、言い方に納得いかない。
「紳士だぞ? この野郎」
「淑女だけど? この野郎」
「美女だよ! この野郎」
「どれも違うだろうが! いちいち反応すんな! って、痛ぇ! 開けてる途中なんだから叩いてくんな!!」
「じゃあ手伝おう。押すぞ?」
「押すな! 俺ごと押すな!! 扉を押せ!!!」
恐らくボスなのだが、完全に忘れていた僕らはいつも通り遊びながら扉の中へと入った。
中は扉と同様に装飾過多だろと突っ込みたくなるくらいの豪勢な広い空間だった。天井には特殊な炎だろうか、真っ白な炎がこの空間を照らしており、昼間のように明るい。
そしてその炎に照らされた金銀の装飾は目に悪いほどキラキラしていた。
「来るとこ間違えたか? 成金趣味の部屋じゃん」
「なまけの部屋ね」
「残念だが、俺は見栄よりも金派だ」
「一緒」
「私もよ」
「あたしは見栄派!」
「「「知ってる」」」
じゃあここはココアの部屋かな? 一人で済むには広すぎるけどさ。
「あたしの部屋? じゃあなまけは出てって!」
「なんで俺だけなんだよ!? ポンタもだろ?」
「ポンタは無害だから」
「何でだよ!!? 有害だろ!」
「どっちでもいいよ。それじゃああれは?」
僕は部屋の扉と反対方向を指差す。正確には部屋中央より少し奥に居るソレだ。蓋の無い巨大な石棺に寝かされており、動く様子は今のところない。僕らが入口付近でバカやっているからだろう。近付いたら嫌でも動くにきまっている。
ココアはそれを見ると、「むむむ~・・・」と唸った後で、
「アウトでっ!」
「だろうな。行くぞ。2人はいつも通り前頼むわ」
「はいはい」
「そっちも後ろ頼むわよ。まずは様子見るからタイミング見て攻撃して頂戴」
「了解した」
「あたしは? もう回復無いけど?」
「「「・・・・・」」」
いつも通りの立ち位置を確認して突っ込もうと思った矢先、ココアの言葉で気付く。言われてみればココア回復無くなったんだった。
回復があったからサポートとして後衛になっていたが・・・今はもう違う、スキル構成見る限りはどちらかというと近接寄りになってしまっている。であれば一緒に前線で戦闘に参加してもらいたいが、そうなるとひとりぼっちになるなまけものが狙われたときフォローできるものが居なくなる。
まぁなまけものなら大半どうにかできるだろうけど。
なまけものと「どうする?」と顔を見合わせるも、結論は出なかった。
「わからーん! 状況見て好きに動け」
「らじゃー」
なまけものは考えるのをあきらめ、丸投げした。
次回更新は3日後の予定です。




