522.罠に嵌ってみた①
「貴様ら・・・。図ったなぁ!!!」
洞窟の入り口でなまけものが叫ぶ。そういえばなまけものだけムクマリの実が生だったな。
1人不味そうに食べているので思い出したかのように言うと、なまけものは膝から崩れ落ちて吐いた。
忘れてたことを謝っていると、ユウさんがスッと新しい実をなまけものに渡す。
「ほら、新しい実よ。私たちの効力きれちゃうから急いで」
「・・・悪ぃ、って、これも生かよ!!」
「いいから食べる!」
「・・・鬼だろマジで」
睨むなまけものだったが時間が無いのは本当なので、なまけものは実を無理矢理飲み込む。
それからはそそくさと歩いて岩の扉の前へとたどり着いた。扉とのやり取りも3度目なので慣れたもんだ。
『道を示した。先へと進むがよい』
「「よかろう。大義であったぞ」」
「苦しゅうないぞ~」
「何言ってるの?」
「「「・・・・・」」」
「え? 私も言わないといけない流れ? ・・・く、苦しゅうないぞ?」
「何言ってんだ、お前?」
なまけものが岩の扉に激突した。なぜわざわざやられるようなことを言うのだろうか? Mだとは思っていたが頭に「ど」が付くのではないかと最近思っている。
なまけものは何もなかったかのように復活すると、扉を超えた辺りで立ち止まる。
「問題は・・・、ここからだな」
「トラップがあるんだっけ? どのタイプ?」
「俺の記憶では踏むタイプか近付いたら作動するタイプ。壁、天井、床から煙が出る」
「僕の記憶と同じだし多分そう。受けてもダメージはないかな」
「幻覚の状態異常になるのだったかしら?」
「その辺はどうなんだろうな。・・・なんだお前ら、何見てんだ?」
試しに行ってくれないかなぁって意味で見てるんだけど。といったら怒られそうなので「別に」と返しておく。
しかしなまけものは即座にこちらの意図を読み取った。そして拳を振り上げる。
「・・・じゃんけんだ。負けたやつがまず行く」
「・・・仕方ないわね」
「まぁそうだよね」
「がんばってねぇ~」
「お前も参加するんだよ!」
しれっと逃げようとするココアを捕まえてじゃんけん。負けたのは僕だった。
「代わってくださいぃぃいい!!」
「「「NO」」」
頭下げたけどダメだった。仕方なしに1人で先に進む。まぁ最悪飛べばある程度の罠は回避できーー
「飛ぶなよ? 意味なくなるからな」
「チッ・・・」
一応『霧化』をONにした状態で奥へと進んでみる。すると数歩歩いたあたりで視界の至る所から煙が噴き出てきた。どうやら罠が作動したようだ。
当然煙など回避しようがなく、瞬く間に全身を煙で包まれる。しかしダメージがあるわけでも状態以上になることもなく、数分で煙が晴れる。視界も良好で特に問題らしい問題はない。少し歩いてみてもふらついたりもしないし。
「? 特に問題ないみたいだよ・・・お?」
状態を確認しつつ振り向いたら誰もいなかった。そこには石の扉があるだけ。しかしさっきまで開いていた筈の扉がなぜか閉まっている。
「・・・・・」
咄嗟に考えれるのは幻覚を見せられているか、それとも転移させられたか。前の湖の件からするに転移させられた可能性の方が高い気がする。
少し考え、全員にチャットした。
ポンタ :みんなから見て僕どう見えてる?
なまけもの :消えた
ユウ :消えたわね
ココア :瞬間移動した~
やはり飛ばされたか。できれば幻覚の方が対処が楽そうなので良かったのに・・・。
ポンタ :この煙、転移させるみたいだね。同じような場所に今居るんだけど、みんな居ないし後ろの扉も閉まってる。そっちは?
なまけもの :俺らはそのままだな。扉も開きっぱだぞ
ユウ :出れそう?
ポンタ :分からない。とりあえずうろついてみる
なまけもの :奥にはあまり行くなよ。恐らく行ったら昨日の二の舞だ
ポンタ :了解
意図的にここへ飛ばしているのであれば、なまけものいう通り奥へ行くのは罠だろう。転移したことに気付かないように移動させ、たどり着いたら何かやられる。ここに来るまでに湖で似たような状況を体験させるのは、ここのトラップのヒントなのだろう。
であれば・・・ここでもカギはあの紋章かな。
次回更新は3日後の予定です