518.コピーと向き合ってみた
さて、気を取り直して・・・。
消えゆく最後の死霊使いを蹴とばし、再度僕のコピーと向き合う。なまけもののコピーは一旦無視だ。近接戦闘は恐らくしてこないだろうし。視界に収めつつ距離を取っていれば、魔法の回避もできるだろう。
『・・・・・』
僕の準備が出来たのを待っていてくれたかのように、構えなおした僕へが襲ってくる。ステータスが下がっているからだろう、それほど速くは感じない右ストレートを回避してアッパーを繰り出す。アッパーは簡単に当たり、僕のコピーは一旦距離を取った。
「思ったよりも弱い・・・。いけそうだ、おととっ」
代わりにとなまけもののコピーが魔法を放ってくる。しかし掛け合わせた高威力の魔法ではなくただの『ファイア』。大きさも大したことないので狭い洞窟の中でも軽々と躱せるレベルだ。躱しつつ、『火炎』を放つと大きく移動して躱す。
「うーん・・・」
何かおかしい気がする。全体的に行動が大雑把すぎるのだ。かしわもちとロバ吉が不意を突かれたとはいえやられることからもっと強いと思ってたのに・・・。これだと不意を突かれても僕でも負けんぞ?
出現するコピーに個体差でもあるのだろうか? それとも香炉壊したから弱体化したのか・・・。いや、弱体化したような弱った動きは無かったら後者はないか。しかし個体差があるのも考えにくいし・・・。
「分からん。まぁとりあえず倒してしまうか!」
考えるのはそれからにしよう。
・・・
・・・・
・・・・・
「おっ? 髑髏消えたな。ココアもう『凍死』しなくていいぞ」
暇を持て余していると、入口を塞いでいた髑髏が消えていく。どうやらポンタがうまいことやったらしい。後はあいつがミスして死霊使いが来ないことを祈るばかりだ。
「来たら私逃げるから。実もあるしね」
「あたしも~」
「ずりぃぞ。俺にも寄こせ」
「一つしかないわ」
「あたしも~」
ポンタめ。なんで俺には渡してくれねえんだ?
いや待て・・・、これもポンタの作戦か? 俺には配ってないから食べられない。つまりもしもの時には2人だけが食べれる状況になる。
そうなったら2人は・・・俺に敵を押し付けるために急いで食べるだろう。
俺も持っていると食べないことにユウが疑問を持つかもしれないが、俺が持っていない現状では・・・食べなくても怪しまれない!
つまり・・・2人へのだましが成功する可能性が確実になる!
やるじゃねぇかポンタ。流石だぜ。
本人はただ忘れただけだと知らず、勝手に策士ぶりを勝算する。
「なんか、なまけがニヤニヤしてる・・・」
「頭おかしいのよ、きっと・・・」
「してないわっ! それよか死霊使い来た時に備えろよ?」
「ポンタが倒してくれるでしょ?」
「ポンタだぞ? できると思うか?」
「「・・・・・」」
2人は無言でムクマリの実を手にした。これで死霊使いが来たらすぐに食べるだろう。俺は録画の準備をしておき、その時に備える。
しかしその時は来なかった。
「「居た!」」
俺らの元に来たのはポンタにくっついて行った2人。名前はかしわもちとロバ吉だったな。
慌てているようだが、どうかしたのだろうか?
大した内容じゃなかったら折角のドッキリチャンスを潰した責任とってもらうぞ。
「どうかしたの?」
「はぁはぁ・・・、ポンタさんが、襲われてっ! 今にもやられそうなんです!!」
「誰に?」
「コピーにです! すぐに助けにっ!」
「・・・・・」
またか・・・。
あいつすぐやられそうになるな。しょうがない、ここは颯爽と助けて貸しでもつくーー
「!? ・・・おいユウ、何のつもりだ?」
歩き出そうとすると、ユウが剣で俺の動きを制する。てっきり「自分がポンタを助ける」とか言い出すのかと思ったが、ユウは俺を見ず、急いできた彼ら2人を見ていた。
次回更新は3日後の予定です