511.洞窟を進んでみた
「やっぱり食わなきゃならんのか?」
「ならん。食え」
「うげぇ・・・」
入口の紋章前まで来たものの、中々中へと入れない。理由は単純、なまけものが中々ムクマリを口に入れないからだ。
「お前からいけよ~」
「いいけど、食ったらちゃんと食うんだろうな?」
「おう! 多分な!」
「・・・・・」
食べなかったら放置して先に行こう。今回は検証なのでなまけものについてきてもらわなくてもいいからね。そう思いつつ口の中にムクマリを放り込み・・・、
「・・・・・」
「ほら噛めよ。嚙んじまいなよ~」
あの味を思い出しなかなか噛めない。そしてそれを茶化してくるなまけもの。しかしこのままでは時間の無駄なのでとりあえず噛む。
「うげぇ・・・」
「マジで勇者だな・・・。よく噛めるわ」
「・・・いいからなまけも食べろ」
「・・・しょうがねぇなぁ・・・。うえぇ・・・、まっず・・・」
2人で不味さに耐えながらなんとか飲み込む。もはや拷問だろこれ・・・。口の中を今すぐにでも洗いたいよ。
「おおっ、消えてる消えてる」
「効果出てきた?」
なまけものが自身の姿を見て効果を確かめている。僕の目から見ても多少透けている程度だが確かに消えていた。ただあの時の子供のように目を凝らさないと見えないレベルではない。認識が少しし難い程度だ。なまけものも僕を見て、「まぁこんなもんだろうな」と言っている。
「よしっ。時間もないし行くぞポンタぁ!」
「了解」
効果が発動した確認も終わったので、僕らは紋章の先へと進んだ。
「来たな」
「来たね。来るかな?」
「効果なかったらそろそろ骨のガチャガチャ音が聞こえるが・・・」
飛ばされた先は先ほどと同じ入口の場所。しかしなまけものの言うガチャガチャ音は一切聞こえない。なまけものが言うには入ったらすぐに音がする筈らしいのだが一向に来ない。
「効果ありってことでいいかな?」
「だな。よしっ、一気に進むぞ。道覚えてるか?」
「大体ね。時間的には余裕だけど走っていこうか?」
「余裕なら歩いて行こうぜ。走ると音でバレるパターンもあるからな」
「確かに」
道はさっき通ったばかりなので覚えている。なまけものの懸念も大いにあり得るので、音を立てないように先へと進む。途中うろつく死霊使いと鉢合わせしたが、ムクマリの効果のおかげで全く気付かれなかった。
真正面から反射的に殴りかかりそうになったなまけものにすら気付かないところから、やはり向こうからは全く見えてないようだ。
「あっぶな。殴るとこだったわ」
「やめてよ。そんなことしたらまたあの実食わないといけなくなるんだから」
「でももう一回は確定なんだろ? 全員で入るときにさ」
「まぁね。焼いて食えば違うかもだけど」
「・・・ありだな。帰って試そうぜ」
「流石に寝ようぜ」
取りに行って、焼いて、食ってなんてしてると寝る時間無くなってしまうわ!
それでもなぜか焼きたがるなまけもの。とりあえず場所教えるから勝手に行って来いとだけ言っておいた。
「OK。じゃあやってみるわ」
こいつ・・・、徹夜でやる気じゃないだろうな? まぁいいや、僕もう知らん。
そんなことを言っている間に、ゴールの紋章がある石の扉の前までたどり着いた。時間は残り2分程度、思ったよりも時間かかったな。
時間もないので、そのまま扉へと触れる。
『眷属になれる証を持つ者達よ、王へ謁見するには眷属になる必要がある。それを望むか?』
「「YES」」
さっきと同じことを言う扉。内容は分かっているので即答した。
すると石の扉が開き、舞った砂埃が収まった扉の奥に通路が現れていた。
次回更新は3日後の予定です