509.ムクマリを手にいれてみた
目の前で子供たちが消えた。いや、消えたと思うほど姿が透明になっているだけだ。目を凝らせばギリ見えるし、動くともっとわかりやすい。
それでも少し目を逸らすだけで居場所が分からなくなるほどその姿は見えなくなっていた。
「ええ~・・・、そんなのあり~?」
これゲームバランス崩す系の木の実じゃなかろうか? そうすぐに思ってしまうほどの透過度。戦闘に使われたらもうこのゲーム終わってしまうんじゃないかな・・・。
「まぁ食べたら分かるか。・・・硬っ、まずっ!!」
テーブルに置いてあった一つを拝借。結局子供のを盗ってしまっているのだが、今はそれよりも効果を知りたい。しかしこの木の実、想像よりも数段まずかった。
子供たちが平気で食べていたから何とも思わず口に入れたが、まず表面の皮?が硬い。何とかかみ砕くと、中はぶにょぶにょで魚の生臭さのようなにおいが口の中に充満する。そして腐ったものを食べたようなピリリ感が舌を刺激しつつ、生魚を丸かじりしているような何とも言えない味がする。
すぐに吐き出したい衝動を抑えて、効果を得るために何とか無理やり飲み込んだ。
「うえぇ・・・、おっ?」
おなかに気持ち悪さを感じて手でさする際に、自身の手が少し透けていることに気付く。そして自身を見てみると背景が少し見える程度に体が透けていた。とはいえ子供ほど透明ではない。やはりゲームバランスが崩れないようにするためだろうけど、ちょっと残念だ。
しかし自身ではそんなに透けて見えないが、ガーデンには効果があるようで、
『くっ!? ムクマリを利用された! 何処だっ!! 魔獣め!』
あらぬ方向を向いて僕を探し回っている。目の前に立ってみるも気付かないほどの効果があるようで、緊急時などはかなり有用なもののようだ。
正直常に1つは常備したいレベルの効果だが、あの味を考えるとちょっとためらう。
『そこかぁ!!』
子供やシスターたちが居なくなって2人になった教会の中を数分探し回ったところでガーデンが僕の方を向いた。時間としてはおよそ5分。効果時間も申し分ない。
・・・・・。
もしかして・・・、これがあればあそこも突破できるのではなかろうか?
『今度は見逃さんぞ! 死ねぇ!』
「『霧散』」
ガーデンが斬りかかってきたので、一旦外に出る。一応その時3つほど木の実・・・ムクマリとやらを拝借しておく。後はなまけものと合流してプレイヤー同士だとどう見えるか再度検証。んでもってあそこに入ってどうなるのか再度確認と・・・、楽しくなってきたぞ! 明日仕事なのに!
『逃がすかぁ!!』
と、その前にガーデン倒さないと。
斬りかかってきたガーデンの剣を、体を少しずらして避ける。人型だと自分のサイズが分かりやすいので避けやすい。そして回避直後に、がら空きとなったガーデン背中を蹴り飛ばして地面に転がす。これもやはり人型の恩恵だろう。直感的に体を動かせて操作しやすい。
これは・・・慣れてしまうと魔物姿を操作できなくなりそうだ。
「『猛毒霧』」
『うわっぷっ!? なんだこれはー!?』
転がしたガーデンに『猛毒霧』を振りかける。ガーデンは大げさに驚き転がりまわるも、それが毒だと気付いたとたん動きが弱まった。というよりも一気に毒で弱ったようだ。
「さて終わりっと。あ、それはダメ」
解毒しようと何かを取り出したガーデンだったが、その薬のようなものを足で蹴とばし、手から離れたところを踏み潰す。目の前で潰されたガーデンはショックを受けたようで『ああぁ・・・』と声を漏らした。しかし直後にすぐ同じような薬を取り出す。
「うわっ、まだ持ってた」
当然蹴とばす。しかしすぐに新たな薬が出てくる。蹴とばす、出てくる、蹴とばす、出て・・・、と永遠終わらない。
「もういいわ! 『破砕突き』!」
最終的に『破砕突き』で殴って倒した。
次回更新は3日後の予定です。