507.ガーデンと戦い始めてみた
名前:ガーデン
職種:聖教騎士
ランク:B
ランクBか・・・、ゴテゴテキラキラした装飾がついた鎧の見た目に騙されるところだった。
教会から出てきたであろう位置に立つガーデンという名の騎士は見た目こそ強そうではあるが、一人でも何とかなりそうな程度の強さのようだ。
「・・・おりるか」
ガーデンの周囲に敵がいないことを確認し、人型となって地面に着地する。
別に遠くから戦ってもいいのだが、せっかくのチャンスだ。今のうちに人型での戦闘に慣れておこう。全員でいる時はユウさんを乗せるといういつものスタイルばかりで、人型で戦うことはないからね。
ガーデンは人型となって降り立った僕に驚きもせず、腰に差していた剣を引き抜き、背中に背負っていた盾を左手に持った。シンプルな剣盾スタイルらしく、練習にはちょうど良くて助かる。
しかし、練習だと思っている僕に対し、相手は額に冷汗を出しつつ強張った表情だ。
『ぬぅ・・・。変化できるとなると・・・高等種か? 攻撃したのは早まったな』
「早まったね。何もしなければスルーしたのに・・・」
伝わったのかどうか知らないが、ガーデンの表情はさらに強張った。しかし彼は一歩も引くつもりはないようで、剣を構えてこちらの出方を伺う。
そして自身を奮い立たせるかのように、
『この教会には孤児がたくさんいるんだ・・・。俺が逃げるわけにはいかない・・・。たとえ死んでも!』
「そういうの言うのやめてくれない!?」
いきなり精神攻撃とかやめてよ! やり難くなる・・・あ、別に教会攻撃しなきゃいいだけか。しかしこの教会思ったより大きいから中は入れそうなんだよね。入れるなら入る。
『!? させん!』
「おわっと!?」
何処から入れるかなぁと見ていたのを狙ったのと勘違いしたのだろう。ガーデンがいきなり斬りかかってきた。幸い距離があったので少し後ろに飛んで避ける。避けつつ『火炎』を放って追撃しようとするガーデンを牽制。
うーん・・・、折角の人型なんだから『火炎』は手から出た方がかっこよくていいんだけど・・・口からかぁ。この分だと『ミストブレス』などの他のブレス系は全部口からだな。
『くっ!? これはまずい!』
「おっと、これはまずい」
ちょっとした牽制のつもりが、範囲が広すぎて教会にも『火炎』が当たりそうになる。見た感じ木造っぽいので燃えるとまずい。中が確認できなくなる。慌てて攻撃をやめると同時にガーデンが安心した表情を見せつつ教会から距離を取るように立ち位置を変え始めた。
『このままここで戦闘を続けると建物に被害が出かねん。何とか奴の気をそらして誘導せねば・・・』
さっきから思ってたけど、この人思ってること全部口に出てる。おかげで分かりやすい。建物を壊したくないという利害の一致もあるのでここは思惑に乗ってあげよーー
「痛っ!」
石を投げつけられた。この相手に『霧化』はいらないかなと切っていたためちょびっとダメージが入る。気にならない程度のダメージだが、回復ができなくなっている以上これ以上のダメージは避けたい。ガーデンを睨むと、ガーデンはこっちの意識が自分に向いたと思い一気に教会から離れるように走り出した。
『こっちだ、魔獣め!!』
「んだと~?」
適当に相手の思惑に乗って怒ったふりをしてみる。ガーデンはそれを見て意識を向けられたと認識したようで一気にスピードを上げて逃げ始めた。そのまま湖岸を迂回するように走って逃げていく。
僕は追わなかった。
次回更新は3日後の予定です。