505.紋章へとふれてみた
「解せん・・・。お前にとって悪くないだろうに・・・」
「何のこと?」
プイッとそっぽを向くユウさんに大ききため息を吐いたなまけものは、そのまま紋章へと触れる。
「あっ!?」
「ふははっ!! バカめ、気を逸らしていることに気づかないとはな!」
どうやらすべてはなまけものの意識ずらしだったようだ。その作戦通り、ユウさんは「奥に行くのを止める」という認識が一時的に消えており、なまけものが紋章に触れるまで気付きもせずいつも通りの状態に戻っていた。
「さぁ~て、何処に転移するのかな~? 髑髏いっぱいのど真ん中かな~? それとも墓場かな~?」
「煽るなぁ。全然怖く感じないけど」
「ふふふ、ユウが怖がればそれでいいのだ」
「・・・なんかそういわれると怖くなくなるわね」
「あれぇ!?」
急にスンっといつもの冷静なユウさんが戻ってきた。怖がるかとニヤニヤしていたなまけものは間抜けな顔で固まる。まぁ言い方が怖がらせるというより、ただの気持ち悪いおっさんだったしなぁ。
そんな彼に追い打ちをかけるかのようにさらなる予想外の出来事が起こる。
『眷属になれる証を持つ者達よ、王へ謁見するには眷属になる必要がある。それを望むか?』
「へ?」
扉?が声を発した。転移まで長いなぁと思っていた僕含め、全員が扉の方へと一斉に顔を向けた。
「え? 何だって?」
「なんか眷属なるかどうかって聞かれてるみたい。なるとどうなるのかしら?」
『なれば王への謁見を認めよう。ならないのであれば今すぐ外へと放り出す』
分かりやすい説明を扉はしてくれた。
眷属になれば入れる。入らなければ入口へと戻されるみたいだ。
「成程な。どうするよ? この先に行くか?」
「「行く!」」
「帰る!!!」
ユウさんは帰りたいようだが、なまけものも行きたい側なので多数決で敗北。むすっとしながらも仕方ないからと先に進むことを了承する。
さっきまでだったらまた暴れだしたであろうが、なまけもののしょぼい煽りのおかげで冷静になった現在ではそれほど行くことに怖さはなくなったようだ。
ユウの了承を確認し、なまけものが代表して扉に意思を伝える。
「扉よ! 俺らは眷属となって先に進むぞ!」
『よかろう』
扉がそう言うと、淡く光っていた紋章が一層輝きを強める。僕らは次の場所へと期待を強める。
しかし、
『・・・だがお前たちは同胞を多数殺した。よって排除する』
「「「「へ?」」」」
紋章から大量の死霊使いが湧いて出てきた。当然髑髏もセットだ。
『キエェエエエエエエエ!!!!』
「「「「でたー!!!!」」」」
僕らは死霊使い達に飲み込まれる形でオアシスへと飛ばされた。
次回更新は3日後の予定です。