504.扉に前についてみた
「つ・・・着いたぜ・・・」
「やったー!」
迷路に苦戦すること2時間ほど。僕らはようやくゴールと思わしき場所へと出た。そこには壁に大きな扉のような石版があり、あの紋章が石板表面に浮かび上がっている。石板の周りには装飾がされており、明らかに入口よりも豪勢だ。これで違ったら
道を塞いで隠すとかふざけたことしやがってあの死霊使いどもが!とイライラしていた気持ちが一気に消えていく。
「ふふん。あたしのおかげ!!」
「どう考えてもたまたまだし、誰かのおかげと言うなら・・・お前をあそこまで運んだ俺のおかげだな」
「それはない」
塞がれていた道に気付いたのはココア。見つけたのはなまけものが言うようにたまたまだ。たまたまココアがなまけものからおりて飛び乗った木箱の裏に道があり、たまたま乗った衝撃で木箱が壊れたせいで見つけた。
しかし湖の時といい、今回の時といい、ココアが活躍しているのは間違いない。そしてなまけものがココアを運んでいるのはいつもの事だしどうでもいい。
「じゃあ目標は達したわね。ポンタ、撤収するわよ!」
「へ?」
「勝手に帰ろうとすんな。まだ入口じゃねぇか。ポンタ!」
「はいはい・・・」
なまけものが「行け」と言うので、扉の前へと進む。恐らく入口の転移陣と同じで、触れると飛べる仕組みなのだろう。簡単で助かる。
簡単でないのは・・・
「行かせない! 行きたくない!」
僕から降り、目の前に立ち塞がるユウさんだ。鬼気迫る様子はどの敵よりも怖い。それくらいの鬼気があれば敵なんて余裕だろうに・・・
「・・・ここのボス見てねえけどよ、ボスより危険な気がするんだが?」
「なまけは変なこと言っちゃダメだよ。社会的に死ぬよ」
「ただのゲームなんだが? まぁいい・・・ポンタ、ハグってこい」
「は? 僕が社会的に消されるじゃん!」
何恐ろしいこと言い出すんだコイツは! ゲーム内だけど抱きついたらセクハラだぞ! というかそれ以前に嫌われたくないんだけど! あと今のユウさん怖いので近づきたくない!!
しかしなまけものとココアは「何を今更・・・」と言いたげな顔で僕の意見など聞く気は無いようだ。
「今こそあの無意味なイケメンムーブの出番だろ? 行け」
「行け~」
「こいつら・・・」
言っても聞かなさそうなので、大きくため息を吐いてからユウさんに向き合う。心なしかさっきより威圧感増してない? うん、気のせいじゃないな。早く帰りたい感がすごい。それは分かる。
しかし僕も先に進みたいんだ!
「ポンタ・・・」
「ユウさん、先行こう? 大丈夫、ちゃんとずっとそばに居るから」
「う・・・」
流石に素で言うのは恥ずかしいので、一時的に仕事モードとなり言ってみる。「駄目!」と一蹴されると思ったが、意外にもユウさんはたじろいで言葉が詰まる。
直感でこのまま押せばいけそうな気がしてきた。
「ユーー」
「いいぞぉポンタ! そのままハグれ!! ハグってキスれ!!」
「キスれ~!」
セクハラ!!
このまま押そうかと思ったけど、後ろで囃し立てる2人が邪魔になってきた。「キースッ、キースッ」と2人して大声で催促してくる。
「ユウさん!」
「は、はい!?」
何故かかしこまるユウさんは、何故か僕をじっと見て次の行動を待っている。顔は何かを期待しているようにも見えるが、なまけものにイラッとした僕は気にしなかった。
それよりユウさんがこれ以上憤慨される方が困る。
「ちょっと先にあの2人黙らせてくる。あ、大丈夫、あの2人が言ってるだけで、しないから安心して」
「・・・・・、そう・・・」
そう言った瞬間、ユウさんが少し不機嫌になった。
とりあえず騒いでいた2人は、何故か加わったユウさんと2人で大人しくさせた。
次回更新は3日後の予定です