閑話 居酒屋
本投稿でまさかの第500回目になりました。
読んでくださっている皆様。誤字脱字、また内容についてご指摘いただいた皆様今までありがとうございます。
これからも同じペースで進めていきたいと思っておりますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。
※今回、本編とはあまり関係ない話です。
某日
居酒屋の隅の席に座っていると、見知った顔が入ってきた。手を上げると相手は気付き、店員に何かを伝えて俺の目の前に座る。
「全く・・・。急に何?」
「今日は榊君の奢り~?」
「奢りなのは間違いないが、俺じゃないな」
「じゃあ私ウーロン茶で」
「とりあえずビール~。あ、つまみも頼んでいい?」
「構わん。あ、俺もビール」
座った二人、柳と柊は奢りとしるとすぐに注文する。ついでに俺も頼んでおく。
一通り頼むと、ユウさんが怪訝な顔で俺を見た。
「で? なんで竹君抜きで急に集まれって言ってきたの? しかも秘密にしとけってどういう意味? ハブるんなら帰るわよ」
「そりゃあいつに聞かれたら困るからだろうなぁ。主にお前が」
「なんでよ?」
「さぁな。まぁ正直なところ俺も言われただけだから理由は知らねぇ」
言い出しっぺからそう言われたからセッティングしただけだ。大体、竹は今日明日出張で不在なので知っていても来れないがな!
「・・・てことは・・・。はぁ・・・帰るわ」
「おっと、帰さな・・・、追いこら! ここでは自重しろ!」
「・・・・・」
何かを察した柳は席から立つも、最後の一人が返すまいと道を阻む。反射的に平手打ちが出そうになった柳は、クリティカルヒット直前でその手を止めた。
直撃を免れた柳先輩は冷や汗だらだらのまま、柳を席に戻れと促して自身も座る。
「死ぬかと思った・・・」
「・・・死んでもいいけど何のつもり? わざわざ私たちを集めて」
「そりゃお前のためだ」
一気に嫌気がました柳にきつく言われるも、柳先輩は気にした様子はない。
だが「お前のためだ」と言われた柳はさらに目つきが鋭くなる。
「そう言われてよかった思い出なんてないんだけど? というか義姉さんの許可取ってここ来てるのよね? そうでなければーー」
「勿論とってるとも。条件付きだがな!」
「条件?」
「それは・・・」
『それは、私も参加することよ!!』
唐突に柳先輩の嫁さんの声がした。名前・・・何だっけ? まぁ嫁さんでいいや。
その嫁さんはどうやら柳先輩とビデオ通話でつながっているようで、柳先輩が取り出したスマホに子供と一緒に写っている。同時に高級そうなお寿司付きだ。
「おい待て、のどかちゃん! 何そのお寿司!?」
あ、のどか先輩だった。まぁ嫁さんでいいや。
「誠くんいないしお寿司とっちゃった。代金は誠くんのクレカで♪」
「ちょおまってよぉ! ずるいよ!」
柳先輩が慌てるも、これ見よがしにお寿司を頬張る嫁さん。相変わらず柊みたいな自分勝手さだ。そしてそれを見つつざまあみろと言いたげな柳。柊は赤ちゃんに釘付けなので放っておく。
「ともあれそろそろ始めたいんだが?」
メンツは一人多いけど揃ったのでさっさと始めたい。そう切り出すと柳先輩をからかっていたいた嫁さんが思い出したように反応した。
『あら? あ、そうね。じゃあ始めましょうか、優美ちゃんの恋路応援会議を!』
「!??」
そして高らかに宣言する嫁さんに驚いた柳はうまうまと飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになる。
俺と柊はほぼほぼ予測通りなので「やっぱりか」と驚きはない。
「げほっ、けほっ・・・。ちょっと義姉さん!? 何言ってるの!?」
『ここから先は誠くんお願いね。私お寿司食べてるから』
「・・・まぁいいか。ま、話は単純だ。ぶっちゃけ進展なさ過ぎて・・・もどかしいんだよ!」
「はぁ?」
「「分かる」」
「ちょ!? なんでよ!」
柳先輩の言いたいことはよくわかる。近くに居る分俺らの方がそう思ってる。だがこれは本人たちの問題なのと、からかいが楽しいのでアクションを起こす気はなかった。しかし先輩はそうではないらしい。
「放っておいてくれないかしら。進展するかしないかなんて・・・私たちの勝手でしょ?」
「ダメだ。なぜなら進展しないと俺らが面白くないからだ!」
『「「分かる!!」」』
「・・・・・」
柳は馬鹿を見る目で俺らを見る。しかし柳先輩は気にせず続ける。
「だが安心しろ。進展しない理由は分かっている!」
「そうなの?」
「ああ。全部竹の所為だー!!」
「・・・・・」
今にも立ち上がりそうな勢いの先輩。鬱陶しいことこの上ない。
しかし言いたいことは分かる。正直あいつが気付かなすぎるのだ。柳の行動で明らかに分かるだろと思うところは何度もあったし、何故あれだけ一緒に居て気付かないのか不思議だ。
「大体俺はなぁ・・・、優美にあそこまでしてもらって気付かないのは許せんのだ。あそこまでしてもらって好意を抱かないのは男として終わってる」
「柳のマイナスイメージがつよい・・痛っ!?」
「馬鹿野郎! 優美にマイナス要素なんてあるか!」
あるけど・・・っと言ったら二人からやられそう。
「気付いてて何もしてないパターンもあるよね~」
「確かに・・・、であれば殺るか」
殺気が漏れ始めたのでとりあえず止める。話がズレそうだし。
「はぁ・・・。だから放っておいてって言ってるでしょ? 私は今のままでも十分いいし、関係が少しでも良くなっていけばなおいいし」
『じゃあ好意があるのは認めるのね?』
「否定したら納得してくれるんですか?」
『「「「しない」」」』
「・・・・・、はぁ・・・」
頭を抱える柳。まぁそうなるわな。いつもならここで鉄拳制裁で終わるが・・・残念、今は現実だ。
しかも相手があの柊に悪知恵ついて勘が鋭い嫁さん相手だと勝てないだろう。立場的にもな。
柳は数分頭を抱え続けた後、
「大体・・・兄さん的には私が誰かと付き合うのOKなの? あれだけ反対してたくせに」
「NOに決まっているだろう!!! ・・・だが、な、どこぞの知らない馬鹿と付き合うくらいならあいつであった方がいいと思っているだけだ。スペックは問題ないし、悪い奴ではないのは分かってるからな」
そもそも柳先輩の許可なんて必要ないんだがなぁ・・・。
「でも好意に気付いて利用しているパターンも・・・」
「やっぱ殺るか・・・」
「その場合、兄さんの明日もなくなるけどいいのね?」
「お前にやられるなら本望」
いい加減めんどくさくなってきた。
この人企画だけど・・・、来ない方がよかったかもしれない。嫁さんいれば十分だったような気がする。
あ、でもダメだ。その場合飲み代の費用が全部俺に来るわ・・・。
『誠くん、話進まない』
「おっと、すまんすまん」
柳先輩は嫁さんに窘められると背もたれに強くもたれかかって大きく深呼吸した。
内心穏やかじゃなさそうな顔をしているが、殺気は何とか抑え込めたらしい。
「・・・まぁいい。じゃあ具体的にどうするかだが・・・、意見ある奴いるか?」
『「「はい」」』
これには即座に手を上げる。あるとも。ありまくりだとも!
しかし負けじと二人、いや柳先輩も自身で聞きながら手を挙げていた。
「お? いいね。じゃあ柊から聞こうか?」
「やった! あたしのは簡単だよ~。一部屋に2人を閉じ込めればいいの! あとは優美ちゃんが押し倒せば竹君もいっきに落ちると思うの!」
『流石柊ちゃん! 分かってるぅ!!』
「「却下!!」」
一発目から過激な案が出た。俺の「強制でデートにでも行ってこい」プランはぬるかったようだ。柳兄妹が同じ仕草で絶対だめだと声を上げる。2人は揃って顔を手で覆い。
「そんなことしたら私・・・恥ずかしくて死ぬ・・・」
「俺・・・絶対憤死する。死にたくねぇよ・・・」
「いや、死なんだろ・・・」
『でもそうでもしないと気付いてもらえないかもよ?』
「「でも無理ー!」」
同じ仕草をする柳兄妹。
話が進まねぇ!!
次回更新は3日後の予定です。
これからもよろしくお願い致します。
(1話で終われませんでした。次回も続きます)