491.川を上ってみた③
「助かったぁ~」
「・・・ったく、遠くに投げすぎだろ。拾ってくる身にもなれよな」
「パワー上げてるからね。それで、そ、それ何? 何してるの?」
どーよ? と自慢げなユウさんだが、しゃれこうべを見るなり委縮し始める。それを見てニヤリとしたなまけものがパスするかのように放り投げるとユウさんは地面へと叩き落とした。やはりパワーが上がっているのか、叩き落としたしゃれこうべは地面に当たると同時に砕け散った。なんか一瞬煙のようなものが出たように見えた。
「ああっ!? 貴重な手掛かりがっ!」
「いやいや・・・、なら投げるなよ」
「そーよ! 投げる方が悪いのよ!」
なまけものの嘘くさい演技はどうでもいいので、ユウさんとココアに事情を説明。そしてとりあえず新たなイベントの情報を集めつつ先へと進まないかと提案してみる。
しかしユウさんは手で大きく×を作った。
「NO!」
「ノー!」
しかもココアも同じ意見。何故だ?
ユウさんは味方がいたことに少し安堵した様子を見せ、
「嫌よ! そんな骨絡みのイベントとか! 幽霊とか出てきたらどうするのよ!?」
「のよ~!」
「「倒す」」
「倒すって・・・、幽霊よ!? 攻撃当たるわけないでしょ!」
「でしょ~!」
「いやゲームだから・・・」
「ユウお前・・・。ゲームと現実の区別つけてるんだろ? 嫌いなのは知ってるがそんなにビビることないだろ。・・・あとココア。お前は乗っかってるだけだろ? こっち来きておとなしくしとけ」
「は~い」
「あっ! ちょ!?」
ココアという味方をあっさり失ったユウさん。代わりになまけものがユウさんに寄ると、耳元で何かをボソボソとつぶやく。時折こちらを見ているように見えるが、いざって時の囮に僕を使う気か?
「・・・分かった。しょうがないわね」
「だろ? よしじゃあ行くか!」
しょうがなくないんだが? 嫌な予感がしてくる。
戻ってきたなまけものに何を言ったか聞いてみたが、
「なに、いざって時はお前が守るから大丈夫だって言っておいたぜ!」
「それ、壁役になれってこと? それとも囮?」
「・・・・・」
驚き、呆れたなまけものだったが、何を思ったのかサムズアップしやがった。
「否定しろよー!」
・・・
・・・・
・・・・・
そんなことがあったが、結局その後はイベントっぽいものが全くなく、舟もあれっきり流れてこず、そのまま何事もなく川を上りきって湖へとついてしまった。地理的にはもっと先だと思ってたのだが・・・、意外に近かったな。
道中は川の中を覗いたりしてみたものの、川は濁ってよく見えず、入口がありそうな窪みもなかった。3人には周囲を確認してもらってたけど、あったのは森林のみで冒険者1人すら見つからない状態だった。
プレイヤー? こんな辺鄙なところ歩いている奴いるのか?
「いるさ、ここに一人な!」
「そういうのいいから」
すぐネットのネタに影響受けるんだからこの子は・・・
「なんだよ乗れよぉ・・・。だがまぁいいや、それよりも不自然だよな?」
「ゲームだからだろうけど、風でのなびく感じとかちょっと変だよね。でも見た目はリアルだし不自然っていうほどでもないんじゃないか?」
「周囲の自然の表現なんてどうでもいいわ! 不自然なのは冒険者だよっ、冒険者! 誰もいないのはさすがにおかしいだろ。もうずっと移動しているのに1組も会わないのはなくないか?」
「言われてみればそうね。まるで私たちが冒険者のいない世界に来てるみたいだわ」
「「!」」
ユウさんの言葉に僕らは何かが引っかかった。
次回更新は3日後の予定です。