490.川を上ってみた②
「お待たせぇ・・・」
ユウさんをオアシスから運ぶこと数分。ようやくなまけものたちに追いついた。
消えたと思っていたユウさんだが、実際はココアに驚かされて落ちただけ。
「おつ。そこにオアシスあったぞ。登録しとけ」
「マジか・・・」
待っている間その辺をうろついていたなまけものの言葉にショックを受ける。舟に出会うのがもうちょっと先だったらユウさん迎えに行かなくて済んだじゃん・・・。とりあえず言われた通り登録。
「それで? ココアは?」
「逃走した。まぁその辺ぶらついてるだろ」
「成程ね・・・」
賢明?な判断。レーダーで確認すると確かにその辺に・・・、いやこっち見て様子伺ってるな。あ、気付かれた。プルプルしてるが、あれは「言うな」ってことだろう。
関わりたくないので見て見ぬふりをし・・・、あ、ユウさんも気付いちゃったか。
突撃していくユウさんを見送り、陸に横付けした舟の中で骨を漁っているなまけものに体を向ける。
なまけものは骨をじっくり観察しつつ、片手で何かを調べていた。
「何してるのさ?」
「いや、ちょっと確認をな。こういうのって何かのイベント的なあれだと思わんか?」
「・・・思う」
このゲーム内で骨のオブジェクトがあるのは珍しくないが、舟に乗って流れているパターンは見たことない。つまりその辺の何もないただのオブジェクトではなく、イベントにかかわる物の気がする。しかし骨の見た目はその辺に転がっているものと大差なーー
「これ見ろ。頭の中」
「中?」
頭を放り投げられ、咄嗟に人型へと変わって受け取る。言われた通り目の部分から頭の中を除くと、内側に何やら模様が刻まれていた。
「何これ?」
「さぁな、調べても出てこない。つまり・・・」
「情報が制限されてる!」
「その通り!!」
ゲームに影響する情報は運営によって消される。なので情報が無いってことは何かあるってことだ。何もなければ普通にネットに転がっているのでなまけものの検索にヒットするだろう。
僕らはガッと握手をし、
「もちろん・・・行くよな?」
「当然」
「どこへ行くのよ?」
「のよ~?」
そこへココアを脇に抱えたユウさんが戻ってくる。ココアの様子を見る限り制裁は免れたようだ。・・・流石、やるな。
「ん? 鉄拳制裁は?」
「触れて行動不能にされちゃ困るし止めたわ」
どうやら制裁よりも、行動不能にされる方が嫌らしい。剣とかで攻撃すればいい話だと思うんだけどね・・・。抵抗されることを考慮してだろうか?
「でも今抱えてんじゃねぇか?」
「ココアがしないって約束したからね」
「ONにしてるけどユウちゃん効かないんだよ~」
「・・・って、言っているが?」
「そうね・・・。ココアを信じた私が間違ってたわ」
ユウさんはため息を吐くと、ココアを目一杯遠くへ放り投げた。
「あーーーーーー!!」
遠のいてくココアの悲鳴。きれいな曲線を描きつつそのまま川へと落ちていった。
そうか、ユウさんは『凍死』効かないんだ・・・。と羨ましさを感じた。
次回更新は3日後の予定です