469. 【海難】と再戦してみた③
『ふへはは・・・。無駄だぁ・・・』
気持ち悪い言い方をしつつ【海難】がニヤリと笑う。
僕もニヤリと笑った。
「そうかな?」
「せぇい!!」
直後【海難】にユウさん一閃が入り、首と胴体が切り離される。しかしすぐにそれらは水となって海と混ざる。水になる前の【海難】の顔に何故か嫌な予感がし、すぐさまその場から離れた。
「また『水化』!? いい加減にしてよっ! というか何で離れるの!?」
「来る!」
嫌な予感は的中した。とてつもない地響きがし視界全体が揺れる。
直後僕の居る高度を軽く越えて水飛沫・・・いや波が空高く舞い上がった。しかも高さを測ることすら出来ないそれは一箇所ではなく至る所で起きている。
僕らの逃げ場を塞ぐように!
「あっ、これは逃げ切れないかな・・・」
「そうね。というかもう水かかりまくりなんだけど・・・」
『我が魔を喰い、全てを壊せぇ・・・『タイダルウェイブスコール』ゥ!』
諦めの中、何処からか【海難】の声がし、その天に届くかのような大波が僕らに襲いかかる。魔物2体に対してあからさまな過剰攻撃。受ければ村どころか小さな町程度なら簡単に滅びそうなくらいの攻撃だ。恐らくこれが【海難】の奥の手だろう。
普通ならどう回避していいかわからないが、
「『蜃気楼』っと」
有能すぎる『蜃気楼』があるので慌てない。タイミングを合わせてしっかり回避する。真上だと回避後、波飛沫に引っ掛けそうなのでなまけものが居る陸の場所まで転移した。
転移し、元居た場所を見ると、天に伸びる水の柱が一部めがけて崩れ落ちるかのように海面へと水を叩きつけている。
その衝撃で海も尋常じゃないくらい荒れていた。
「うわぁ・・・」
「当たったら終わりだったわね」
「そう・・・だね・・・。ああなるね」
「? ・・・!?」」
荒れる海の中、なまけものが漂流している。
地面は全体的に濡れており、部分的には削られたように地面が無い。崖際に立っていたから、荒れる海に地面ごと引きずり込まれたのだろう。どおりで岸に居ないと思った。
そんななまけものは助けてくれと必死に手を振っている。戦闘中だが流石に放置するわけにはいかない。
「引き取ってくる。ちょっと降りてもらってもいいかな? あれ絶対重いし」
「しょうがないわね・・・」
ユウさんを波が来ない場所に降ろし、なまけものを回収する。
「何落ちてんだよ!?」
「すまーん! まさかあそこまで波来ると思わなくてよっ!」
「ココアは? 居ないみたいだけど・・・。もしかしてっ!」
「ああ、逃げたよ。俺が飲まれた直後にな」
「・・・あ、そう・・・」
てっきり流されたのかと思ったけど、なまけものを見捨てて逃げたようだ。レーダーを確認してもユウさんと一緒に居るみたいだし問題はなさそうだ。
「それで? どうだった?」
「ん? ああ、ドームは何とかなりそう。ただ突破してもすぐ『水化』されるし、何がトリガーかわからないけど、アレされると『蜃気楼』使わないと逃げられない」
『蜃気楼』は便利な反面、SGを多く使う。多用はしたくない。
「アレなぁ・・・」
「なまけは避けれそう?」
「狙われてみないと何とも・・・。まぁ所見では無理だな。潜って運良く回避できるか・・・くらいだな」
「お前あの波の中で潜ったら浮いてこれんだろ・・・」
今だって沈みかけてたくせに・・・
「・・・・・、じゃあ無理」
次回更新は3日後の予定です。