459.彼らと別れてみた
「あざーすっ」
「お礼言うんじゃねぇ。敵だぞ」
なまけものの解放を条件に場所を教えると、彼らは新たな船を出してそそくさと移動を開始した。一体何隻持ってんだ・・・。船なんて要求する必要ないじゃん・・・。
「次会ったら絶対船燃やしてやるからなっ!」
「もう一回燃やしてやろうか!」
「わははっ、やってみろ~!」
やらなかった。交渉時に戦闘はやめたから攻撃するだけ無駄だし。
彼らはやはり恨みがあるのか、笑いながらもこっちを散々煽りながら去っていく。流石にイラッとくるが、どうしようもない。
「オアシス情報程度で交渉に応じてくれて良かったわ」
「まぁね。無駄SG使わなくて済んでよかったよ。全く・・・、なまけのせいで無駄な交渉をしたよ」
「お前らがさっさと助けねぇからだろ!」
「アンタが落ちるからでしょうが!」
「それはココアに言えよ! というかそうなるって察してたなら言えよ、俺にも!」
「「落ちるとこ見たかったし・・・」」
「何でだよっ!?」
「おいおい、暴れると『アイスウォール』から落ちるぞ」
なまけものはココアの『アイスウォール』に一旦引き上げた。そしてそれを僕が引っ張る形でちょっと場所移動している。あの場所だと【海難】に襲われる可能性があるからだ。
今は【海難】と一定の距離を保ちつつ、相手が見える位置で立て直し中だ。
まぁ立て直し中といっても、
「ユウ、剣貸してくれ」
「? いいけど何に使うの?」
「毛を乾かしたい」
「・・・ま、いいわ。はい」
「助かるぜぇ」
こんな感じで、ただのなまけ待ちだ。SG的にはもう全回復済なのでいつでも行ける。
しかし燃える剣で毛を乾かす絵はシュールすぎる。
「ちっ、思ったよりも乾かねぇ・・・。ユウよ。もっと出力上げれないか?」
「私が持てば上げれるけど・・・。調整難しいから下手したら毛全部燃えるわよ?」
「もう燃やした方が早いんじゃないの? 軽くなれば僕も運びやすくてWINWIN」
「勝手に俺もWINにすんな。まぁこういう時は骸骨の方がよかったって思うけどな。散髪とかできねぇかなぁ」
「しようか? 爪だけど」
「してもいいわよ。焦げるけど」
「してもいいよ。凍傷になるけど」
「被害にあうしか想像できねぇ。てかココア・・・お前どうやってカットする気だ・・・」
「え? 濡らすでしょ~、凍らせるでしょ~、それで折って切る」
「それ氷だけ折れて毛はそのままなんじゃ・・・」
「じゃあ抜く」
「それはやめろ!」
結局、ユウさんが出力を上げつつ乾かすこととなる。ユウさんは「何で私が・・・」と言いつつも手際よく乾かしていく。炎の調整も完璧だ。
「ところでポンタよ。アレ大丈夫なのか?」
「アレ?」
「あいつらだ。ちゃんと【海難】について言ったのか?」
なまけものはもう声も届かないだろう船を指差す。方向的に【海難】に近づいているから気になったのだろう。あの距離なら襲われてもおかしくない。
「いやいや、ちゃんと言ったよ」
新しい船を彼らが出した際に、流石に注意しておいた。しかし伝わらなかったのか気にしてないのか知らないが、彼らは【海難】を無視して最短距離でオアシスへと突き進んでいる。
「大丈夫・・・あっ」
「あっ!」
「あ~あ・・・」
気になった矢先、船は大津波に消され、一瞬で粉々になり海に散った。
次回更新は3日後の予定です