458.また船を燃やしてみた
「あっ、ども~」
「「「「!?」」」」
先行して相手の船に乗ると、全員が一斉にこちらを見た。
「あっ! お前ら!」
「さっきはよくも!!」
「これ新しい船? もう一回燃やすわね~」
そういいながらユウさんが燃えた剣を甲板に突き刺す。そこから一気に船が燃え始めた。一応情けで一気には燃やさない。
「持ち主は潰れる前に戻した方がいいよ」
「「「「下種野郎どもが!!」」」」
心外だ。ちゃんと情けかけたのに・・・。
襲ってきたので飛んで回避。そのまま船から離脱する。スキルや魔法が飛んでくるが、距離がすでに離れているので避けるのも苦ではない。後は適度に近づきつつ、SGを極力使わないように『火炎』で複数カ所を燃やしていく。
ものの数十秒で船は沈没した。
目の前にはデジャヴのように、海を泳いでいる彼らと・・・なまけもの。
どうやら予想通り、予告なく船を送還したココアのせいで海に落ちたようだ。「助けてくれ」と連呼するので、近寄って足に捕まってもらう。しかし体毛が海水を吸ったなまけものはかなり重く、持ち上がらなかったので捨てた。
「何で落とすんだよ!」
「重い、無理」
普段でさえ二人持ち上げはきついのに、更に重くなったなまけものなんて持って飛べるか!
「ユウ降ろせばいいだろ! 俺とユウどっちが大事なんだ?」
「ユウさん。ユウさんの方が軽いから」
「愛は重いずぅあっ!?」
何か言ったなまけものの額にユウさんが放った『火炎』が当たる。
「ユウさん攻撃先間違ってる」
「あれは罰よ。それよりもポンタ、アレ」
「ん? 何?」
ユウさんに言われた方角を見ると、そこには青い海上では異物感半端ない赤いアレが・・・。
「うわ出た! いつの間に!?」
「分からない。さっき見まわしたら居たの」
目に悪そうな赤い服を纏った【海難】が、こちらの戦闘が終わるのを待つかのように佇んでいる。いや、ニタニタとこちらを見ている時点で待ってるな。
襲ってこないのはまだこちらが戦闘中だからだろう。こりゃ戦闘が終了したらすぐに大波が来るぞ。
「こりゃなんとかしてなまけ拾わないと」
【海難】との戦闘には、アタッカーのなまけものは必須だ。何とかして助け出さなければ・・・。
しかしそう思った矢先に戦況が変わる。一緒に浮かんでいた敵さんたちが、なまけものの周りを取り囲んだ。
全員がなまけものを攻撃できる態勢をとり、こちらへと話しかけてくる。
「お前ら、俺らを忘れてはいないだろうな?」
「忘れてないけど?」
「ならいい。交渉だ、俺らに船を寄こせ。こいつと交換だ」
「やだ」
「いやよ。何言ってるの?」
「やだ~」
「うわっ!? ココアか・・・。びっくりしたなぁもう・・・」
なんかなまけものを人質に船を寄こせと言ってきた。当然だが拒否する。
いくらでも復活できるなまけものの価値は船より低いんだ。
あっさり拒否され、敵さんは若干戸惑う。
「・・・こいつらマジか? だ、だが、お前ら次にアレと戦うんだろう? アレが何かは知らないがこいつがいないとまずいんじゃないのか?」
「・・・まぁ、そうだね。でもやられてもすぐ復活するし」
「出るオアシスは遠いだろう?」
「いやそこにあるよ?」
オアシス自体は見えないけど、ある場所はここからでも見える。
しかし相手は知らなかったようで、「え? マジで?」と目を丸くした。最寄りはそこだと思うのだが、どこから来たんだろう。
当然、その場所を知りたがる彼ら。
「どの辺?」
「教えると思うか?」
そして当然教えない。
「そいつと交換で教えてあげる」
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