456.【海難】を見つけてみた
「嘘だろ・・・」
ユウさんが見たという場所について驚愕する。そこには海岸に腰を掛ける【海難】が居た。
背中を丸め、どこか疲れた感じの様子は、散歩途中で疲れてベンチに腰かけているおじいちゃんのようだ。
「波出しすぎて疲れたのかな?」
絶好の不意打ちチャンスではあるが、感知されて戦闘になるとまずい。疲れてそうだが、流石に一人で勝てるとは思えない。
場所を地図上でマークだけしておき、Uターンしてみんなと合流・・・おっと、嫌な気配がするぞ。直感でそう感じ、なまけものが操縦する船に乗る直前で再度Uターン。しかし直後背中に誰かが着地した。見なくても気配で分かる。
「ねえ、どこに行くのかしら?」
「・・・ちょっと、水平線の先まで・・・かな」
振り落として逃げたいが、下は海だ。今落とすとユウさんが海の中へ落ちてしまう。それはさすがに後が怖い。
「そう? でもその前に説明・・・してくれるわよね?」
「な、何をか・・・あ、はい。説明します」
とりあえずこってり絞られた。まぁいつも通り適当に「めっ!!」された後は本来の調子に戻る。
「それでポンタよ。居たか?」
「居た。海岸に腰かけてた」
「お前まで冗談・・・うわマジだ」
あまりにもシュールだったので撮った写真を見せる。なまけものも納得したようだ。
「おじいちゃんじゃん」
「おじいちゃんだ~!」
「これ殴ってもいいの?」
「まぁ戦闘になったら一気にストレスの権化と化すだろうからいいんじゃね? 場所はまだ先か?」
「先だね。このペースだと数分かかるかな」
船の速度は遅くはないが、僕が飛ぶ速度と比較するとかなり遅い。それに・・・
ドォン!!
大きく船が揺れた。理由は並走している誰かの船。
近寄ってくるなと思ってたけど、そのまま体当たりしてきた。
「はぁ・・・。こりゃもうちょい時間かかるな・・・」
「だねぇ・・・」
向こうの甲板を見ると戦闘したそうな声を上げる魔物が3人ほど居る。襲ってくる気らしい。
「ポンタ、ユウ」
「うい」
「はいはい」
向こうが何かを仕掛けてくる前に2人の『火炎』で船を燃やす。満遍なく燃やしたので船は一気に炎まみれになった。
後は慌てて飛び移ってきた相手をなまけものが魔法で海へ落として放置。溺れてはいないようなので、後は頑張って岸へとたどり着いてくれ。
「あれ? 倒さないの?」
「ふっ、無駄な殺生はしないのだよ」
「SG使いたくないだけだろ・・、って、ココアわざわざとどめ刺さんでいい!」
「え~! そうなの?」
が、SGを無駄使いしたくない僕らの意思を無視し、ココアが落ちたひとりひとりに攻撃を始める。相手も岸まで泳ぐよりはいいと判断したのか、反撃する気はないようだ。ただそのまま倒されるのは癪らしく、ココアの攻撃は避けている。ココアもココアで、絶対当てると闘志を燃やし始めた。
「なまけ」
「はぁ・・・、しゃーねーな・・・」
このままでは【海難】戦闘前にココアのSGが尽きる危険がでてきたので、なまけものが強めの魔法を放って即死させる。
「あーっ!!」
「あー! じゃねぇ! これから本命バトルって時にSG無駄遣いすんな!」
「いいじゃん、いいじゃん! どうせ一回やられるんだから!」
「何で一回負ける前提なんだよ・・・」
「だってほら」
「あ?」
ココアが「船の前を見ろ」と仕草をする。振り向くと青い壁がそこにあった。一瞬何かわからなかったが、どこからか聞こえてきた声で理解する。
『『タイダルウェイブ』』
「・・・あっ」
全員揃って、船の後方で漂流してる彼らを見ていたのがまずかった。そう思った直後僕らは船ごと波にのまれた。
次回更新は3日後の予定です