440.金の船を見つけてみた
「・・・・・」
チャットからまたなまけものが馬鹿やってユウさんから鉄槌でも貰っているかのかなと思った矢先、それが目の前に現れた。
それとは金色の船。
最初は青い海の表面に太陽が反射しているのかと思ったくらいピカピカしており、違和感が凄い。普段なら変なの見つけたひゃっほーいと寄っていくのだが、あまりにも違和感が強すぎてどうしようか迷うくらいだった。
ただ折角見つけたので放置するのはもったいない。少し近寄って誰が乗っているのかを確認する。もしかすると他のプレイヤーがどこかで調達した船かもしれないし。
「ふむ・・・、ふむふむ」
周囲を旋回しつつ甲板や側面、舵輪が付いている場所などを重点的に見てみるが、プレイヤーが乗っている様子はない。というよりも誰も操縦していないのだ。ただ漂流しているように見える。
そこからプレイヤーの船ではないと結論付け、思い切って真横まで寄ってみた。船の大きさは僕らが持ってるのと同じくらいでそこそこのサイズがあるが、やはり寄ってみても甲板に誰の姿も見当たらない。
しかしそれよりも、
「え? これ金じゃ・・・」
あまりにもキラキラしてたからそうじゃないかと思ったが、その船は金で出来ていた。何故沈まないのだろうかと疑問があるが、今はどうでもいい。確実にになにかあると直感した僕は直ぐに乗った。仮に何かあってやられてもオアシスは近いので大きな問題ではない。
「・・・何もないな」
敵が出ると予想していたが何も起こらない。取り敢えず動き回ってみるが特になし。というか帆すら金なのな。何で風で靡くんだろうか。もうよく分からん。
深く考えるのをやめ、取り敢えず船内を物色。中にも誰も居らず何かがあるわけでもない。
「・・・何もない・・な。・・・ん?」
見渡していると船室の隅の床が四角く枠取りされていることに気付く。近付いて四角い枠の内側を突くと、床が落ちて下に行けるようになる。どうやら船倉があるようだ。覗き込んで見ると思ったよりも広い船倉で、不気味な白い炎の灯りが船倉を照らしていた。そして船倉の奥、船の船首あたりに何かがある。しかしここからではマストの柱などが邪魔してよくは見えない。
「よっとっ!」
ここまで来て放置するなんてありえない。特に問題もなさそうなので、船倉へと飛び降りて船首を目指す。
あるのはお宝か、トラップか、敵か・・・。敵はないか、狭いしね、ここ。
「あっ、一応みんなに言っておいた方がいいか」
今更だけど、いいのがあるのであれば呼ばないと後で煩い。いや、結果を見てからでいいか。
そう思った僕は、開いたチャット画面を閉じてその船首ある物を見た。そして同時にそれも僕を見た。
『・・・ミタナ?』
「・・・うっ・・・」
その言葉と同時に視界がぐらりと傾く。自身が倒れたとは気付かなかった。上下感覚どころか、痛覚、いや五感が徐々に分からなくなる。そして意識が一気に遠のいて・・・、
『ヨクボウノケシンヨ、オマエニハノロイヲヤロウ』
その言葉が聞こえたと同時に僕の意識は無くなった。
次回更新は3日後の予定です。