434.【海難】と再戦してみた⑥
『目障りな・・・、まるで羽虫だな』
「こんなでかい羽虫居たら目障りどころか怖いわっ!」
ひとつの首でなまけもの達が敷居を作ってるのを確認しつつ飛んでるとため息混じりに羽虫呼ばわりされた。悪態つかれるのは苛立っている証拠で、十分に嫌がらせできている僕への褒め言葉として受け取っておこう。
「何よ、自分はナナフシみたいなヒョロガリのクセに・・・」
「ナナフシ・・・?」
「ゴボウみたいな虫よ。知らないの?」
ゴボウみたいな虫・・・。イメージ出来ん・・・。まぁ【海難】みたいなものなのだろう。
ユウさんは「男の子だったらそれくらい知ってるんじゃないの?」と言いたげな目で見てくるが、あいにく虫には興味ないのだよ。
顔を逸らすと、ユウさんが「何かを思い出したかのように「あ~・・・」と声を出した。
「そういえば苦手なんだっけ? ミミズもダメだったもんね」
「うぐっ、い、インドア派、なので・・・」
特に貶されている訳ではないのだが、ユウさんの中の僕のイメージが悪くなった気がして精神的にダメージが入る。ついでに注意がそれて【海難】の攻撃も受ける。
飛び回っているうちに更に追加で点灯しているので、流石にダメージも無視出来なくなってきた。あと2つ光れば全部の宝石が点灯するのだが、今は1つ点灯するのに当初の半分の時間になっているので、2つ点灯するまで残り3分だ。
いい加減そろそろ決めないとまずい。
なまけもの達の進捗はどうなんだろう?
「なまけまだ!?」
「待たせたなっ! 今完成したぜ!」
「どーよっ!」
ふふんと自慢げな2人が見せてくれたのは半径10mあるかないかの氷の防波堤。それが【海難】の周りをぐるりと囲い逃げ場を無くしている。防波堤の高さは【海難】の腰くらいの高さしかないが、『水化』対策としては十分だ。水と化した【海難】が乗り越えられない高さであれば問題ない。多分!
しかも範囲も狭い。これくらいなら仮に同化されても円内全てを一度に攻撃出来る。
「いいわね。じゃあ後は・・・」
「ユウさんの仕事かな?」
「待ってました!」
ユウさんが剣を構える。それに合わせて僕は【海難】へと突撃。相手の魔法を躱しつつ一気に距離を詰める。
『アクア・ランス』はもう見切った。速度が上がっても掠る程度で済むので脅威ではない。
『やはり躱すか・・・、なら『激流砲』』
こちらの行手を塞ぐように大きな水の球が現れる。僕らが見てからの回避ができないほど近付いた所で放ってきた。
しかしそれも想定内だ。
「『蜃気楼』!」
流石に回避は出来ないけど、スキルを使えば別だ。さっきと同様の方法で【海難】の背後に回る。直後すでに振りかぶっていたユウさんが【海難】へと剣を振り下ろした。瞬間移動後からの攻撃が早い。どうやらユウさんは僕がスキルを使うと気付いていたようだ。
「!?」
しかし僕が驚く早さで動いたユウさんの攻撃にも【海難】は対処してきた。あっちも僕がスキルを使うことを予測していたのか、即『水化』し真っ二つになる。そして今までと同じように同化。
またしても目の前から消えた。
次回更新は3日後の予定です