421.【海難】本体と戦ってみた①
入ったと同時に扉が閉まる。
「む、思ったよりも深い。ユウさん」
「ありがと。お願いね」
せいぜい足首くらいかと思った床の水だが、僕の膝くらいまでつかるほどの深さがある。ユウさんの弱体化を防ぐために乗ってもらう。
「う、動きづれぇ・・・」
「そう? いつも通りだよ~」
「そりゃ浮いてるもんなお前は。足場出してくれ」
「しょうがないなぁ~」
そしてこの水が僕らの動きを阻害する。幸い僕は飛べるので大きな問題にはならないが、なまけものは大分辛いようでココアの『アイスウォール』に乗る。
同時に僕らが入ってきたのを認識したのか、中央の水の塊が弾けた。中からやせ細った灰色の肌の男が床に落ちる。しかしすぐに糸で無理やり釣り上げられたような動きで起き上がった。顔にはあの気味の悪い笑った仮面が付いていてそれが【海難】だと直ぐに分かった。しかし何故か服はブーメランパンツのみ。あの無駄に赤い服は着ておらず、手にはきれいな青い宝石が沢山埋め込まれた太めの杖が握りしめられていた。
「変態だぁ!!」
ココアが叫ぶ。確かに狂気の格好だ。ネタ的な意味で人気でそう。
「ココア覚えとけ、ネタ装備や変態は基本強い」
「そうなの!?」
「そうだぞ。しかし【海難】のやつ儀式後に自身の服剥いでったのか? でも仮面は残ってるしなぁ・・・。ポンタはどう思うよ?」
「さぁ? 仮面だけ余ってたんじゃない? それか服は勝手に脱げてどっか行ったか・・・」
「どうでもいいでしょ! ほらマーキングしたわよっ!」
名前:海難のレヴィア
職種:魔術師
ランク:A
「ランクAになってるね」
ついでに言うと職種も魔術師になっている。
フィールドに出現した【海難】はランクSだったので、この【海難】はそれよりも弱いということになる。儀式前だから、していない分弱いという設定といったか。
油断は出来ないけどね。
「ポンタ、俺あまり動けねぇからタゲ取りとか頼んだぞ」
「うい。ミスったらすまん」
「そんときゃこの部屋からバイバイするだけだ」
そう言うけどなまけものは何だかんだ生き残るだろう。それ程気負わずにいつも通りやればいい。なまけものに攻撃が向きそうなときだけ攻撃すればいいだけだからそれほど難しくないし。
「ユウさんフォローお願いね」
「いいけど防御は無理よ?」
「分かってる。弾けそうなのを弾いてくれればいいよ。躱すから」
恐らく【海難】の攻撃パターンは規模と威力は弱まっているもののランクSの前と同じだろう。なのでユウさんが弾ける攻撃はほぼ無いと思われる。なので防御面はあてにしない。どちらかと言えば攻撃に専念して欲しい。
「分かったわ。近付く時は合図頂戴」
「了解」
【海難】が持つ杖の宝石が淡く光りはじめる。それを見て僕はさらに飛翔した。
戦闘開始だ。
次回更新は3日後の予定です