420.ボス部屋に着いてみた
このまま崩れ落ち続けられても困るので、なまけものには明日以降少し無駄遣いを抑える方法を伝授することで立ち直って貰った。いや大したことではない。無駄遣いをやめればいいだけなのだから。
「宜しくお願いします」
「気持ち悪いくらいしおらしいわね」
「それだけ切羽詰まってるんじゃないかな。とにかくようやく先進めるよ」
「なんだかすごい時間かかった感じする」
「アイス食べてたからじゃないの?」
「・・・どうしてそう思ったのかしら?」
「何となく。あ、あの扉がボス部屋じゃない?」
ユウさんがジト目で見てきたのでそう答えつつ、すぐに話題を変える。あの感じ、図星っぽいね。まぁだから何だって話だが自身の予想通りかどうか確かめたかっただけだ。
因みにボスへの入口であろう場所は休憩していた場所からずっと見えていた。いい加減触れてあげないとね。
「えー! お風呂だと思ったのにぃ!」
「あの短時間で入れるわけないでしょ・・・」
「や、やっぱりボスって【海難】なのかな? なぁ?」
しかしすぐにココアが話を戻してくる。それを無理やり逸らす。とりあえず話を広げるためになまけものに振った。
「【海難】だとすれば儀式で捨てた本体だろうが・・・どうなんだろうな。だって意識自体は海で好き勝手してるあの体の中だろ? だからちょっと違うんじゃね?」
「違う?」
「防衛機構とか、守護霊とかかな。いや待てよ、さっきのローグが守り要員だとすると、やっぱ本体か?」
「本体だとすると・・・攻撃はあれと同じ?」
「かもな。ただ儀式で強くなったって設定だし、本体は儀式前の威力と仮定すると、威力はそれほどじゃないと思う。だから一撃死はない筈だ。ユウ意外はな」
「私はダメなのね・・・」
「相手が水だからな。取り敢えず最初は近付かずに様子見ろよ? 仮に相手が【海難】じゃないとしてもだ」
【海難】でなくても、場所的に水に関係する敵の可能性が高い。水属性であればだれであれ、ユウさんには不利だ。
ユウさんは頷いて了承する。
「じゃあ取り敢えず僕が囮になりつつ牽制するから、いつも通り本命の攻撃はなまけよろしく」
「おう、了解だ」
今回は細かい作戦など立てない。
それぞれの立ち位置だけを決めてボス部屋の扉を開ける。地面から天井までの高い石の扉だが、軽く押すだけで開いた。正確には触れたら勝手に開いた。僕らはゆっくり開く扉のすきまから中を確認する。
水の床と天井の円筒形フィールドの中、中心に何か水色のものが浮いていた。恐らく水の塊だろう。そしてその水の塊の中に何かいる。
それを見たなまけものが小さくため息を吐いた。
「やっぱ当たりか・・・。外れてくれても良かったんだがなぁ」
「当たりでいいじゃない」
「でもいきなり当たりはなぁ。折角複数の隠しダンジョン知ったのに、いきなり当たりだと他の場所行くやる気も減るんだよなぁ。だってハズレって分かってるしさ」
「何となくわかる」
「そう? でもどうせ全部行くんでしょ?」
「ま、そうなんだがな。んじゃいくか」
「了解」
「ええ」
「はいはーい」
丁度扉が全開になる。なまけものの言葉で僕らはボスのフィールドへと足を踏み入れた。
次回更新は3日後の予定です。