416.ローグと戦ってみた⑦
ローグと距離を取って仕切り直す。
相手のHPは残り少ない。恐らく30秒と持たないだろう。だが30秒フィールドを逃げ切れる自信はない。もう一度攻撃を躱すなり、阻止するなりしなければやられる。
つまりまだ安堵できない。
「・・・仕方ない。賭けるか」
取り敢えず念のため『強再生』でHPを全開にする。SG的にこの戦闘ではもう使えないだろうし、『蜃気楼』ももう使えない。最悪一撃耐えれば勝てる見込みがあるのでこっちに賭ける。あとは何処まで避けきれるかだ。
『ハァハァ・・・』
相手はHP減少に伴い息がどんどん荒くなっていく。そして何故かオーラも強くなっている。考えたくないが、
残りHPの少なさに比例して強化されているのではなかろうか。だとするともう相手の行動に対処できんぞ。
ちょっと怖いのでさらに距離を取って天井ギリギリまで逃げておこーー
「来たっ!」
僕の動きに反応してローグが走り出す。そのまま『飛翔脚』で空中を翔るように移動しまたしても距離を詰めてきた。今回は距離があったにも関わらず長槍を投げてくることは無い。恐らく投げても躱されると判断したのだろうか?
何にせよ投げて無駄な時間を使ってくれる方がよかったのだが・・・。
「ちぃ、『スケイーー」
『させんっ!』
突っ込んでいた時は『スケイルショット』で牽制する。そう思って準備していたが、ローグはそれも想定していたようだ。僕が放つ前に左手の長槍を投げてきた。
さっきまでのような振りかぶる投げ方ではなく、投げる速さを重視したクイックモーションで投げられたため、反応出来ずに翼の付け根を貫かれた。
ダメージはHPの6割程度で済んだものの、軽い投げでこの威力と貫通力。最初に比べもはや攻撃力がおかしい状態だ。
「っぐぅ!? や、やばっ・・・」
そしてまずいことに片翼になってバランスが崩れる。ローグはすぐそこまで迫っているのに無防備な状態をさらしてしまう。
当然ローグがそれを見逃す筈がない。残った右手の長槍を両手持ちし一気に距離を詰めてきた。さっきの『破砕突き』の構え、食らったら終わりだ。何とかして回避しなくては。
・・・いや、
『死ね。『破砕突ーー』
「しゅ、『縮地』ぃ!」
『!?』
僕は天井を利用して『縮地』を発動。回避の為ではない、倒すためだ。一瞬ローグよりも速く動き、体をめいっぱい使って体当たりをする。そのまま押し続け地面へと突き落とした。
『ぐはっ!?』
「ぃたぁ!!」
地面にぶつかり、そのまま2人そろって転がる。大きな音を立てて壁に激突して何とか止まった。衝撃で土煙が舞い上がる。
「ううぅ・・・」
そのまま転がっていたいけど、まだ戦闘終了ではない。漂う土煙の中、HPを見つつよろよろと立ち上がり、一旦その場から離れる。着地の衝撃でだろうHPはギリギリまで減っていた。
「ローグは?」
ローグは土煙から出てこない。恐らく出てこないだろう。
もはやローグのHPはギリギリだった。あの攻撃に耐えられる筈がない。仮に耐えられたとしてもノーダメージとはならない筈だからどのみちスリップダメージで死んだ筈だ。
その予想通り、数秒するとローグが死んだ情報が入る。同時に僕はその場にへたり込んだ。
勝った喜びよりも、何とか勝てた安堵の方が強い。
喜びが少ないのはまだ勝った気がしてないのと、結果的にだが一人だと勝ちきれなかったからだろう。
「ココア。回復ありがと」
「ぎりぎりだったけどね~」
振り向くとこっちも安堵した様子のココアが傍に居た。
次回更新は3日後の予定です