415.ローグと戦ってみた⑥
キュイン!!
ローグがこちらを振り向くと同時に長槍を投げる。さっきとは段違いの速度で投げられた長槍は回避が間に合わなかった僕の右頭の一部を削って飛んでいく。あまりの威力にふざけるなと言いたい。
「刺さるとかじゃない、もってかれる!」
まともに受ければ風穴確定だ。そうなれば死ぬのは確定。そしてみんなが終わるまでのんびり一人旅確定。
・・・あれ、悪くないぞ。
相手のこの強さならわざと負けるという芝居を打たなくても普通に負けるし、そもそも誰も見てない。
・・・チャンスでは? ・・・いや、
『ふんっ!』
「うぉお!?」
今度は何とか躱せた。
確かに1人でのんびり出来るチャンスだがせっかくここまで頑張ったのだ、負けたくは無い。相手のHPは減り続けてる、つまり後は逃げ回るだけで勝てる、勝てるチャンスがある。ならギリギリまで頑張る。
僕は相手を攻撃することを捨て、逃げる方法だけを考える。長槍投げは距離さえとっていればギリギリ躱せるので、問題は近付かれた時にどうするかだ。
『飛翔脚』が使える以上、空中に逃げても詰め寄られる。ここには天井があるので、天井にさえ足がつけば『縮地』は使えるので躱すことは可能だが、避けても超スピードで追いつかれると『縮地』のクールタイムが間に合わず終わりだ。
かといって地上に降りるわけにもいかない。降りても何のメリットもない。寧ろ相手が動きやすくなるだけだ。
攻撃して牽制し近づけないようにするのが一番効果的かもしれないが、あのスピードで動かれたら当てれる気はしない。
ということは・・・
「詰む?」
逃げ切れる手がない。考えてもスピードが大負けしている時点で追いつかれる。どう考えてもそれで終わり、逃げ切れる気がしない。
キュイン!!
そして考える時間も無くなった。飛んでくる長槍を躱すも、真正面に『飛翔脚』で接近するローグが見えた。
躱すにはどうする? 右か、左か・・・、しかしどちらを選んでも次の『飛翔脚』で方向を変えられたら一緒だ。
だから、あえてローグへと突っ込む。相手が『飛翔脚』を使ったタイミングに合わせて体当たりをかます。しかしローグは再度『飛翔脚』を使ったのか、空中でひらりとその身を翻し避ける。カウンター気味に狙ったが予想されていたのか、思考すらも強化されているのか、あっさりと避けられてしまった。
『終わりだ』
「まだだっ」
通り過ぎて背中ががら空きの僕にローグが長槍を投げる。スローモーションになっているかのような錯覚の中、僕はその長槍を尻尾で受けて止める。そしてその勢いを極力なくさないように体を回転させて方向を変え、ローグへと投げ返した。
『何っ!?』
「決まっーー」
たと思った長槍はローグとは全然違う場所へ飛んでいく。体を回転させたときに方向が狂ったようだ。長槍は意味もなく天井の一部を削って終わる。
ローグがそちらを見ている間に僕は距離を取りつつ、
「チャンスだったのに!」
と、自身のミスを嘆く。
当たっていれば動画でなまけもの達に自慢しまくれたが、それをするには僕のプレイヤースキルでは当分先のようだ。
次回更新は3日後の予定です。