401.逃げてみた③
「ココア逃げるよ」
「潜水艇は!?」
「捨てろ。面倒になる前に逃げるの!」
僕はすぐさま扉へ向かって走る。
さっき『縮地』じゃなく『蜃気楼』を使っておけばよかった。扉までの距離が遠い。
それに相手プレイヤーがその道を塞ぐ。
「逃がすかっ!」
「逃げるわ! あとそっちが僕なんかよりもボスに集中して方がいいよ!」
そう言って相手の攻撃を躱す。さっきのスキルを使ってくるのかと思ったが普通の攻撃で良かった。軽くジャンプして相手を飛び越え、そのまま扉から通路へ抜けーー
「!? なんっ!?」
ガクンと体が止まる。
見ると尻尾を彼らに捕まえられた。
「捕まえーー」
「チッ!」
すぐに尻尾を『溶解液』で溶かして切った。ついでに相手にも少しかけておきつつ、地面にもある程度ばら撒く。そして相手が一瞬怯んだ瞬間に全力疾走。相手がばら撒いた『溶解液』を越えるのに時間をかけている間に逃げる。
『『『フヒヒハハッ!』』』
「うげぇ!? コイツ増えんの!?」
そしてちょうどいいタイミングでレンブラントの笑い声。エコーがかったところから無事増えたようだ。後はレンブラントに足止めを任せ僕は逃げた。
そして階段を登り、真ん中くらいまで来たところで一旦休憩。流石に疲れた。
「はぁはぁ、しんどっ」
幸い守備騎士も居ないので壁にもたれてのんびりする。息を整えつつ周囲を警戒、しかしさっきから気になることがある。
ココアが異様に大人しいのだ。声すら発しない。潜水艇を無視して逃げたことに怒っているのか?
「・・・・・」
そう思いながら乗っていたはずの背中を見るとココアは居なかった。一瞬思考が止まる。
落とした? いや、ココアは凍らせて張り付くからそれはない。となると自分の意思で降りたと考えた方がよさそうだ。
じゃあどこで? 自分の意思で降りたのならあそこしかない。潜水艇のところだ。
じゃあどうする? 無視して逃げたいね!
「はぁ・・・」
僕は大きくため息を吐きつつ、取り敢えず確認の為にチャットをする。生存確認でもある。
ポンタ :ココア。今どこ?
ユウ :DEATH
ココア :潜水艇の中。助けて~
予想通りの場所でまだ生きてた。ユウさん死んだけど。
ポンタ :助けてと言われても無理。部屋からせめて出てくれない?
ココア :無理~! 目の前で戦闘してるんだもん! ヤバッ、こっち見た!
ため息しか出ない。
しかし無視して戻ると後の面倒ごとが増えるので仕方なしに戻る。このまま1人で戻るとユウさんとココアのダブルパンチが待っているだろう。ユウさん分は既に確定しているがダメージは最小限にしておきたい。
ポンタ :分かった今行く
ココア :DEATH
「・・・・・」
遅かった。
降りようと向けた体を登るほうへと回れ右する。そして階段を再度駆け上がる。こうなったら逃げ切るしかない。
なまけのことはその時完全に忘れていた。
次回更新は3日後の予定です