399.逃げてみた①
「『いい加減にしなさいっ!』」
「ぎゃあああ! 助けてくれぇ!」
「どう収拾つくんだろう、これ」
自身の分身(連戦3体目)と激しくやり合うユウさんと、複数のユウさんズ相手に叫びつつも意外と善戦しているなまけもの。その両戦闘を眺めつつ、どうするべきかを悩む。
戦闘が終わるのを待つしかないのか?
「ねぇねぇ? 潜水艇手に入った?」
と、そこへココアが声を掛ける。
「ん? ああ、入ったよ。今送還してるからここに無いけど? 乗りたい?」
「乗りたい! ポンタは?」
「乗りたいな。折角手に入れたんだし」
「じゃあ乗りに行こ」
「・・・行くか!」
ココアの提案に少し考えるも乗った。
レンブラントももういないし、今やっている戦闘は僕に関係ない。それに1人で抜けるには心もとないが2人ならまだマシだ。
ただココアなので、さらっと全責任押し付けれらそうな気がするが・・・。
取り敢えず後でユウさんらに何か言われた時用の言い分を考えつつ、しれーっとその場から離れる。存在を可能な限り空気と化し、足音を減らして戦っている2人の側をすっと抜ける。
そのまま誰にも気づかれずに開きっぱなしのドアから抜けた。
「・・・バレなかったね」
「ふふふ、意外と堂々と歩く方が見つからないものさ」
ユウ :ポンタ、後で話があるから
なまけもの :俺もな!
「「・・・・・」」
そんなことなかった。がっつりバレてた。
「逃げるか」
「そうしよ~」
こういう時は逃げるに限る。海底へと逃げてしまえば2人も追って来れないだろう。後は2人が忘れるまで顔を合わさなければOKだ。
『いたぞぉ!』
『こっちだ! 早く来てくれ!』
「げっ!?」
しかしそう上手くはいかない。階段を登ろうとすると上から守備騎士達が押し寄せてきた。エレベーターも大破し、飛ぶことも叶わない今、階段を塞ぐほどの守備隊を避けて突破するのは無理があるし、倒していくにも数が多い。
「うわぁ、追いつかれちゃった!」
「撒かずに倒してきてよー」
「無理だよー。他のプレイヤーが邪魔するんだもん」
追ってきたプレイヤーかな?
誰にせよ、そのプレイヤーが邪魔でココア達も苦労したようだ。まぁ、相手からしたら通路塞いだりと邪魔されているわけだしやり返すわな。僕だって多分そうする。
「階段はダメだ。こっちから回ろう」
室内には戻れない。階段もダメ。となれば左右の他の区と繋がっているだろう緩いカーブの通路に行くしかない。何も考えず階段の登口に近かった側の通路へと進む。
その通路は天井や壁がガラスで出来た海に中を楽しむ通路のようになっているが、楽しんでいる余裕はない。無視してくれたらいいのに守備騎士達が追ってくる。
逃げつつさっき出来た疑問をココアに聞いてみる。
「それで、そのプレイヤーは?」
「階段降りてきたところまでは追ってきてたけど・・・どっか行った」
「どっか・・・か」
少なくとも降りてきている。だが僕らが戦闘していたあの部屋には来ていない。
となれば、僕が走っているこの通路を移動したのだろう。下まで降りてきた以上、上へ戻るってことはないだろうし、上がれば守備隊とかち合うから他の区の下に置かれていると思われる潜水艇を奪いにいくと考えるのが自然だ。
「多分この通路通ったんじゃないかな」
「そうかも! 何か別のとこ行く的なこと言ってた気がするし」
「どっち行ったかは・・・」
「知らなーい」
「・・・だよね」
進んだ先に居ないことを祈ろう。
次回更新は3日後の予定です